誰もが楽しめる大衆化の知恵2015/02/21 06:36

 「幕の内弁当」にしろ、「庭」や「自動車」にしろ、言葉を言い換えていえば、 弱者でも楽しめる、好き嫌いのある人でも、どこか好きなところを見つけて、 そこから関心をつなぐことが出来るという、大衆性につながる。

 日本人のオリジナリティーの背景には、生活の基礎を成す文化がある(自画 自賛)。 無限の造形、無限のエネルギー。 トータル・デザインとしての知恵。  あるものを、上手に並べ替え、捨てないで、享受出来る。 「松花堂弁当」と いうのがある。 田の字の形は、誰にでも出来て、美しく見える。 どこでも 出来る、地域の材料で出来る仕組み。 運びやすい。 食べ終えた時、きれい。  簡単な作法で食べられ、順序はどうでもよい。 本式の料理を、誰もが楽しめ る大衆化現象だ。 「自動車」も、誰もが乗っている。 安い、誰からも好ま れる。 どこかに好きなものがある。

 「無用の用」(『広辞苑』[荘子(人間世)]無用とされているものが、かえっ て大用をなすこと。)は、大事なことだ。 周りまで、救っていける。 親鸞の 真宗(摂取不捨)は、町民宗教。 人々にわかりやすい。 悪人も救われる、 すべてを救う。 八百何十年か前、真宗だと思うが、仏壇を発明した。 出前 の方が、計画経済が出来る。 出前のオリジナル。 寺には七堂伽藍、スーパ ー・ウルトラ・デラックスから、スタンダードまである。 「親切心」、貧乏人 でも全てを味わいなさい。 それなりに楽しくさせましょう、手軽に。 簡便、 能率、勉強せずに…。 「デモクラシー」は、昔からある。

 「一輪差し」。 誰が差しても、かっこいい。 ゆかしい。 利休は観察力が よい。 作法の大衆化。 「一輪差し」は、極意中の極意、「宇宙は拈華微笑(ね んげみしょう)」がオリジナル。 「複雑なる単純」、お洒落だ、不精なのでは ない。 心根の豊かな、日本の美意識。 専門性で、威張るのは下品、田舎。  人智を尽しての技術、結果は花一輪。

 人間の求めているものを、満足させながら、一つの国家をつくっている。  「家」は、高密度で単純化した、無限に近い物の世界、絢爛たる空間だ。 コ ンパクトな、小さな中に、強い力を求めていく、何千年の知恵。 美しい物を、 形を変えて再現したいという気持が、高度成長をもたらしたのではないか。 築 き上げられた「心の中の観念」が、形を変えて顕れて、人様を喜ばす。

 以上、35年前のノートから、栄久庵憲司さんの話を再現してみた。 ご冥福 を祈る。