末盛千枝子さん「3.11絵本プロジェクトいわて」の話2017/11/02 07:13

 30日の仲間内の情報交流会に、遠路はるばる岩手県八幡平から末盛千枝子さ んに来て頂いて、話をしてもらった。 絵本編集者、「3.11絵本プロジェクト いわて」代表を務めている。 まど・みちおさんの詩を皇后様が選・英訳され た『どうぶつたち THE ANIMALS』や、皇后様のご講演をまとめた『橋をか ける 子供時代の読書の思い出』など、話題作をつぎつぎ出版し、テレビの「皇 室アルバム」などでは、皇后様の友人として登場、コメントを述べているのを 見かける。 私は「友達の友達は皇后陛下」と僭称しているが、同期卒業の学 生時代には知らなくて、初期のすえもりブックスの絵本にファンレターを出し て以来のお付き合いだ。

 2011年3月11日に東日本大震災が発生すると、末盛千枝子さんのもとには 被災地の子供たちを心配する声が世界中から届いたという。 3月24日には末 盛さんの提案で、南部屋敷と蔵の盛岡市中央公民館を拠点として、被災地の子 供たちに絵本を届けるプロジェクト「3.11絵本プロジェクトいわて」が始まる。  2、3週間の内に全国から本が届き始め、23万冊が集まった。 エリック・カ ールの『はらぺこあおむし』などは沢山来た、5百何十冊も。 集まった寄付 金や年賀はがきの助成で、6台の運転席と助手席以外は絵本が積める本棚にな っている「えほんカー」が完成し、四輪駆動の軽トラック5台は、大槌町、釜 石市、普代村、野田村、大船渡市の読み聞かせグループに寄贈された。

 末盛さんは、その前に見て来た人から「何も言えない」と聞いて、4月4日 に現地に入った。 保育園、避難所などに絵本を届けて、読み聞かせをした。  宮古では、目も向けられない状況の瓦礫の中を子供たちがやって来る。 好き な本を持って行っていいと言うと、一人の男の子が最後まで探していた。 い ろいろな絵本を見せても、「違うの」「違うの」と言う。 津波で流された自分 のお気に入りの本を探しているのだ。 『ちびくろさんぼ』だった。 最後に、 それは見つかった。 本の好きな者同士、その気持はよくわかる。

 山田は、海岸沿いのオイルタンクが倒れて、海が燃え、悲惨な状態になって いた。 一人の若いお坊さんが、雪が舞う中、裸足に草履履きで、角、角でお 経を上げて歩いて行くのを見た。 『ビルマの竪琴』の水島上等兵のようだっ た。

 皇后様は「もう現地に入ったのね」とおっしゃり、絵本の原画を飾れないか と提案された。 しばらく経って、公民館の展示室がきれいになってから、展 覧会を開催した(2013年3月から5月まで、原画展)。 震災で、皇后様とは 前より頻繁に連絡するようになっている。 皇后様は絵本プロジェクトに、最 初はお手元に二冊ある本の中から一冊ずつ、その後は、折々にその時期にふさ わしい本を何回かにわけて送って下さった。 それはボランティアの人たちへ の心をこめたエールだと末盛さんには感じられ、嬉しかったという。