「文明政治の六条件」とは何か2021/08/04 07:12

そこで平山洋さんの授業「福沢諭吉とは誰か? 「文明政治の六条件」」である。
 (1)「文明政治の六条件」とは何か
 平山洋さんが『福澤諭吉 文明の政治には六つの要訣あり』の中心に据えた『西洋事情』初編(1866)の「文明政治の六条件」とは何か。 この「政治」は、社会全体を指す。
 第一条件 「自主任意」自由を尊重して法律は寛容を旨とすること。
 第二条件 「信教保護」信教の自由を保障すること。
 第三条件 「技術文学」科学技術を奨励すること。
 第四条件 「人材教育」学校を建設して教育制度を整備すること。
 第五条件 「保任安穏」法律による安定した政治体制のもとで産業を振興すること。
 第六条件 「貧民救済」福祉を充実させて貧民を救済すること。

 このネタは、ロンドンでオランダの医者シンモン・ベリヘンテにレクチャーを受け、『西航手帳』にメモした五条件に、公立病院などを見学して第六条件を加えたものだ。

 『西洋事情』の未刊行本は1864(元治元)年にできあがったもので、日本の国家体制はどのように組み替えられるべきか、来るべき日本の国の形を考えていた、江戸の各藩実学派によって次々と筆写された。 彼らは『西洋事情』によって、とんでもない世界(現在われわれが当然と思っている)が外にはあることを知ったのだ。

 だが、「文明政治の六条件」言論の自由、立憲君主制、政権交代のある議院内閣制など、英米の演説や討論で最大公約数を得ようとする文化、現行と同じような制度を導入すればよいという福沢の構想が100%うまくいかなかったことで、1945(昭和20)年の悲劇につながる。 伊藤博文などが福沢、大隈重信らの構想、憲法交詢社案に危機感を持ち、明治14年の政変によって、福沢、大隈とそれに連なる人びとは排除され、維新の元勲が残った。 坂野潤治さんは、交詢社案は戦後の日本国憲法にそっくりだと言っている。 交詢社案では下院(衆議院)から首相を選ぶ(上院(貴族院)を含まず)、英国と同じようになっている。 日本国憲法には、参議院から首相になれないという規定はない。 大日本帝国憲法は軍人に選挙権を与えていないが、交詢社案は軍人に選挙権を与えている。 戦争をするかしないかは国民全体の責任、自由を増やせば増やすほど世界の安定性は増す、最大多数の最大幸福に通じる。 独裁政治が間違いなのは、30年前に東欧で起こったことを考えればわかる。

 (2)福沢諭吉の著作は「文明政治の六条件」の逐条解説だった。
 「文明政治の六条件」をトータルで説いたのが、『学問のすゝめ』初編(1872)であり、それを専門的に詳しくしたのが『文明論之概略』(1875)だった。
 第一条件 『通俗民権論』(1878)『時事小言』(1881)
 第二条件 『福翁百話』(1897)
 第三条件 『民情一新』(1879)
 第四条件 『学問之独立』(1883)
 第五条件 『通俗国権論』(1878)『実業論』(1893)
 第六条件 『分権論』(1877)

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
「等々力」を漢字一字で書いて下さい?

コメント:

トラックバック