橘家圓太郎の「算段の平兵衛」中2023/05/16 06:57

 二十両、持って来た。 お花は、親身になって心配してくれるのは、平兵衛さんだけだ、と言っている。 二十両、頂きます。 二た月か、三月、旅に出ます、遊山旅。 それから、おばさんと二人で、仲人をして下さい。 それにはやっぱり、餞別がねえ。 五両。 若い嫁をもらって、楽しかった。 世間に、何と言われようと。

 でも平兵衛、これといった仕事はない。 お前さん、お米、切れちゃったよ。 今まで、どうやって食べてたの。 みんな、頼み事に来ない。 博打にでも行ってみよう。 着物をばったに売って、賭場へ通う。 勝てない、駄目だ、どうにもならない。 帯を売って、賭場へ。 とにかく勝てない、裏目が出る。 楽屋にも、競馬で、死ぬほど馬券を買う人がいる。 自分の師匠だとは言わない。 丁半、両方に賭ける。

 どうにもならない。 お花、美人局をやろう。 こないだも、お庄屋が覗いていた。 お前のケツを見ていた。 一杯やっていて、呼び込むんだ、俺が留守だ、二、三日帰らない、と言え。 助平ジジイ、手を握ってくる。 何してんだ、間男見つけた、と俺が出て行く。 できないよ。 源ちゃんの女房がやった。 隣村の小間物屋。 暑いねと、蚊取り線香をつけるときに、胸を見せたら、おかみさんに抱きついた。 源ちゃん、あれあれ、見つけたと。 馬鹿だね。 これで、ご勘弁下さい、と。 できるかね。

 ハックション。 お花、花粉症かい。 お庄屋さん、愚痴を聞いてもらいたい。 上がるわけにはいかない。 あの人は博打で、二三日帰って来ない。 恨んでるんだろう、こんなことを押し付けて、ニャンと、上がって来た。 お前、ちょっと痩せたか。 お酒の相手をして下さい、ワン。 ちょいと、上がるかい。 婆アが、カリカリしていた。 平兵衛は、金でどうにでもなる。 器量のいい女、ウチの婆アも若え時は…、塩辛婆アになった。 お前、酌をしてくれるのか、酒が旨い。 ちょいと、手を貸せ。

 ヨッ! お庄屋! ワッ、どたん! どうしてくれるんだ。 お庄屋、まばたきしないよ。 脈がない。 殺して、どうする。 死んだんだよ、助平ジジイ。 無茶しないよ、死んだだけだ。 でも、お足がつくんだよ。 やっけえなことになった、暗くなるのを待とう。

 暗くなると、よいしょと背中に背負って、庄屋の若い倅夫婦の家の前の草むらへ。 大きな松の向こう側が、庄屋の家。 松に帯をかけ、首を吊ったようにしようとする。 何これ、海老反りだけど、これでいい。

 (庄屋の家へ、声色で)今、帰った。 平兵衛の所にお花がいた、酌をしてもらった、開けてくれ。 開けられません、首を吊って死ね、死ねるものなら死んでごらんなさい。

 しばらくして、おかみさん、外へ出る。 こんなところで、寝ているよ、馬鹿。 お前さん! こんな低いところでも、首括って、死ねるんだ。 私が、死ねと言った。 倅と、馬鹿嫁が、あちこちで言いふらすだろう。