シニア世代への『学問のすゝめ』2023/07/17 06:23

 小室正紀さん(慶應義塾大学名誉教授)「21世紀の『学問のすゝめ』―シニアに期待する福沢諭吉」。 もし今日、福沢諭吉(1935-1901)が生きていたら、文明の担い手としてシニア世代に期待した。 福沢の考えた文明の進歩。  (1)文明は「科学的精神」(=物事を客観的・実証的に考える精神)によって進歩する。 「科学的精神」は、「多事争論」によって進歩する。 (2)「多事争論」はいかにして可能となるか。 「諸説の並立」=「権力の偏重」がない=「自主自由」。 「諸説の並立」はいかにして可能となるか。 諸権力が拮抗していた歴史による。 政治力と経済力の分立。 人々の智力の進歩。

 まとめると、経済(政治から独立した)の発展→「権力の偏重」が弱まる→「諸説の並立」「多事争論」→「科学的精神」・智力の進歩→経済の発展。

 福沢から明治の若者へのメッセージ。 「独立」しなさい。 「他人の智恵によらざる独立」=精神的独立=科学的精神。 「自ら物事の理非を弁別して処理を誤ることなき者」。 「他人の財によらざる独立」=経済的独立。 「自ら心身を労して私立の活計をなす者」。 なぜなら、独立した者は「多事争論」を担いうる。

 現在の若者は「独立」しうるか。 精神的独立(科学的精神)はひとまず措き、経済的「独立」を妨げるものに、雇用のサラリーマン化、終身雇用体制がある。 現状では、彼らに「多事争論」を期待することは難しい?

 シニアにおける「独立」の可能性。 経済的「独立」の可能性。 終身雇用体制から既に外れており、年金・資産により経済基盤を備えている。 精神的「独立」の可能性。 学ぶ時間を持っている。 それまでの経験と学問を結び付けられる。 自由に知的サークルを形成できる。

 シニアにおける「独立」の鍵。 重要なのは学ぶこと。 「賢人と愚人との別は学ぶと学ばざるとに由て出来るものなり」(『学問のすゝめ』初編) 学問では、「智見を交易し」「智見を散ずる」ことが必須、「必ず人と共にぜるを得ず」(同第12編)。 「概して云えば日本の人は仲間を結で事を行うに当り、その持ち前の智力に比して不似合なる拙を尽す者なり」(『文明論之概略』第5章)。 ⇒知の仲間を形成して、智見を交換して高める必要。

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