柳家花緑の「試し酒」前半2023/11/02 07:03

 代々落語の家系で、と、花緑は派手な肌色の羽織、白と灰色の太い横縞の着物で始めた。 落語研究会、袖で、小さん、志ん朝、小三治を見てきた。 九つから落語をやって四十、弟子は二十人面倒見ている。 私の誕生会、盛岡のわんこ蕎麦が浅草にあって、一門、妻、太神楽を入れ十三人で行った。 ふだんも三人前食べる台所おさん(五代目小さんが好きな名)が一番で198杯、二番が一番下の弟子で緑助の133杯。 200杯で名前が貼り出されるのに、198杯は残念。 私は107杯。 おかずは食べない、「味変」するトッピングで食べるんだが、皆が限界を超えて、肩で息している。 誕生会だから、あとで生クリームのケーキが出たが、誰も食べられなかった。 カラオケ二時間、コンビニの紙皿で少しずつ食べた。 ギャル曽根などの大食い、食べる芸は残るだろう。 江戸時代、大酒飲みの会があったが、酒をいっぱい飲むのも大変。 私は、酒を飲めない方だけれど、しぐさなら、いくらでも飲める。

 お前さんが来るの、楽しみにしてたんだから、今日はウチに根を張って、一杯やっとくれ。 私は毎晩やってるが、相手がいないと駄目でね。 表に、お連れさんがいるのか。 ウチの下男で、大酒を飲む、下女の話だと一度に五升飲んだそうだ。 会いたいな、呼んでくれ。

 近江屋さんのお供さんか。 何です、よばったんだが、何か用かね。 名前は? 久造。 酒が好きだそうだが、五升飲めるか? わからない。 うまく飲めたら、小遣いをやる。 飲めなかったら、どうする? 歌か、踊りを。 駄目だ。 (近江屋が)じゃあ、二三日内に御招待することにしよう。 どれくらい掛かる? そんなことは心配するな。 旦那様が散財するだか…、表に出て、考えてきていいか。 いいよ。

 主人思いだな。 一時に五升飲めるわけがない。 酒の仕度を、大きな薬缶、大きな盃もある。 私が負ければ、二三日内に箱根に御招待する。 「浮かむ瀬」という盃、武道から来ているのか、「とびこみ行けば浮かむ瀬もあり」、捨て身になって飲めば飲めないことはないってのか。 面白いのは「可盃(べくはい)」、底に穴が開いていて、全部飲まないと下におけない。 銘「武蔵野」は、野が広くて見つくせない、飲み尽くせないという洒落だ。

 お待ち遠様。 考えた、どうぞ、やらしてもらう。 えけえ盃だな。 一升入りだ。 これで五杯も飲むのか? そうだ。 揚げ底になっとる。 あらあら、中の絵が浮き上がって見える。 旦那様、頂戴いたします。 (広げた扇子を盃にして、ゆっくり、ゆっくり持ち上げて、飲む)フッ、フーーッ、一杯飲んだ。 味も何も、わかんなかった。 今度は、味わって飲むべえ。 旨めえ酒だな、こんな酒、飲んだことがない。 御殿みたいな家に住んで、まともじゃあいられない。 旦那様、こないだウチで飲んだ酒は旨くなかった、今度はこの酒にすべえ。 こんな結構な酒、誰がこしらえたか、ご存知ですか。 唐土(もろこし)の儀狄(ぎてき)という人が、最初につくったそうです。 駄目だ、この酒は、酒の方からどんどん飛び込んでくるから、味わうこともできねえ。 アーッ、驚いたねえ、どんどん飲んで、本当に好きなんだねえ、お前から唐土の講釈を聞こうとは思わなかったよ。