加藤秀俊さんに教わった雑学2023/11/13 07:00

 加藤秀俊さんの「パソコン通信」や沢山のご本から教わった雑学は数えきりない。 私が「等々力短信」に書き残していたので、確認できるものをいくつか並べてみたい。

 フリーマーケットというのをFREE MARKETだと思っている人が多いようだ、FLEA MARKETなのに、というのも、その一つ。 何を隠そう、私もてっきりFREEだと思っていた。 昔、経済学の初歩で教わった完全市場という用語の呪縛にとらわれていたと、釈明してもだめだろう。 FLEAはノミ、「蚤の市」だったのだ。

ロバート・ジェームズ・ウォラーの『マディソン郡の橋』(村松潔訳・文藝春秋)が評判になった時には、こんなことを書いていた。 アメリカで田舎というと、アイオワが定番のようだ。 映画『フィールド・オブ・ドリームス』の、あの風景だ。 みわたすかぎりの畑の中に、ぽつんぽつんと農家がある。 その風土と暮しは、加藤秀俊さんの『アメリカの小さな町から』という本で知っていた。 もちろん、農業共進会という行事も…。

 これも加藤さんに教えていただいたことだが、文通によって南方熊楠の学識と博覧強記に驚いた柳田國男は、自らを「遼東の豕(りょうとうのいのこ)」とへりくだって、教えを乞う姿勢を示した。 南方は紀伊田辺に住む在野無冠の学者、柳田はエリート官僚で、学界でも頭角をあらわしはじめていた時期である。 『広辞苑』によれば「遼東の豕」は、遼東では珍しい白頭の豚も、河東では珍しくないことから、世間ではありふれていることを知らずに自分一人が得意になることのたとえで、一口に「ひとりよがり」のことだという。 そういえば、加藤秀俊さんの論文のAbstractで、柳田國男が「やなぎだ」でなく「やなぎた」だったということを、初めて知った。