ガンジスの岸辺で「昴」を歌う2010/09/24 07:07

 谷村新司の「ココロの巡礼」は、さらにヒンドゥー教の聖地ハリドワールへ と進む。 ものすごい群集が、赤茶色に濁ったガンジス河に入って沐浴してい る。 燈籠流しのように、大きな葉の上に花やロウソクを灯したプージャーを 流す。 途中で食べたカレー・プレート、60ルピー(110円ほど)のせいか、 谷村は発熱し、下痢をして、二日間ホテルでの静養を余儀なくされる。 聖地 とは、地獄のことか、と思う。 自分の中にあるものを全部吐き出しなさいと いうのが、聖地なのかと感じる。 小さな娘が、シバ神の恰好をして、顔を白 く塗っている。 「蒼白き頬のままで」は、シバ神につながる。 体中青い色 をしたシバ神は、破壊と創造の神だ。 今までの自分を壊して、新たな道を行 けということかと、谷村は、還暦になった自分の音楽人生を見直す。

 谷村はさらに、ガンジス上流のリシュケシュへと向かう。 修業者(サルー) の町で、いろいろな苦行をしている。 22年間、座らない修業をしている人が いる。 ヒマラヤ山脈の入口の山にも登ってみたいと、標高1000メートルの 「天空の城」というヒンドゥー寺院ハスマンマンディにも登る(ハスマンは猿 の神様で、『西遊記』のモデルという)。

 道中、ガンジスの源流を望む場所に出る。 谷村はなぜか懐かしさを感じた。  その風景は、故郷、大阪の南、河内長野の石川の風景につながった。 ハリド ワールで体調を崩した時、母親の夢を見た。 その夢の中に、忘れていた記憶 があった。 母親に愛されている確かな記憶だった。 「無条件の愛」を感じ た。 谷村はずっと、母は姉ばかり可愛がって、自分はないがしろにされた、 と思い込んでいたのだ。 母なるガンジスの岸辺で、今までの自分を壊し、新 たな自分で「夢を追い続ける」と、祈るように「昴」を歌う、谷村新司の目に 涙があった。