正蔵の「夢の酒」 ― 2012/09/05 02:25
正蔵は白の着物に、羅の羽織。 残暑が厳しく、地下鉄などで、うたた寝、 拾い寝をする人が多い。 冷房の効いた、こういった場所が寝やすい(と、客 席を見回す)。 「もし、あなた、起きて下さいよ、あなたッ」 「どうも大変 ご馳走になりまして、有難うございました」 「私ですよ、お花です」 「お 前か、何だって出し抜けに起こすんだ、いい所だったのに」
店では大勢でしゃべって楽しそうなのに、奥は一人ぼっちで寂しいというお 花、うたた寝をした夫の若旦那の見た夢の話を聞きたがる。 聞いても怒らな いなと念を押し、向島で突然抜けるような夕立にあった話をする。 粋なお宅 の軒で雨宿りをしていると、その家の女中が「どうぞ、中へ」と。 「ご新造 さん、大黒屋の若旦那ですよ」と声をかけると、中から実にいーーい女、中肉 中背でぽっちゃりした、年の頃は25、6。 若旦那がいらっしゃるなんて、神 様の思し召しと、酒の支度をする。 一滴も飲めない若旦那、勧められるまま に、やったりとったり、二人で三合飲んだ。 女は桜色になって、小唄やどど いつを歌う、「私は出雲に暴れ込む」、なんとも色っぽい。 若旦那は飲めない 酒に、頭が痛くなって、奥の八畳間の布団で横になることに。 少しよくなっ たところに、今度は女が頭が痛いと、赤い長襦袢ですっと布団に入って来た。
「ヒーーッ」とお花、大喧嘩になる。 騒ぎを聞いて、駆けつけてきた大旦 那、お花、泣くかしゃべるか、どっちかにしなさい。 何、向島の女と奥の八 畳間で寝た、主あるものに違いない、間男と言われたら、身代限りになってし まう。 夢なんです、夢でございますとも。 世話の焼ける夢を見なさんな。 お花、ちょっとこっちに来な、と意見をした大旦那、お花に頼まれて昼寝を し、淡島大明神に願をかけ、夢で向島へ叱言を言いに行く。
「ご新造さん、大黒屋の大旦那がみえましたよ」 酒を勧められて、私は倅 と違い三度の食事よりお酒が好き、お話したいことがあるが、少しだけ、と。 火を落としたところなので、ちょっとお待ちを。 冷やはいけない、以前飲み 過ぎて、大しくじりをしたことがある。 お燗は、まだでしょうか、と二度三度。
「お父っつあん、起きて下さい」 不思議なことがあるもので、惜しいこと をした。 お叱言の最中でしたか。 いや、冷やでも、飲めばよかった。
正蔵の古典路線、人情噺よりも、こういう噺のほうがいいかもしれないと思 わせる、そこそこの高座だった。
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