高山寺(こうさんじ)の鳥獣人物戯画2014/12/11 06:38

 いつも拝見しているブログ「マーちゃんの数独日記」の筆者は、家内の中学 の同級生で、高校の数学教諭をなさった方だが、さかんに各地に旅行される。  5日は「『鳥獣人物戯画展』を観る」だった。 http://blog.goo.ne.jp/dora0077/e/c80f46fbaca98bda2efb9193ad56cde3 10月7日~11月24日まで京都国立博物館で開かれた「国宝 鳥獣戯画と高山 寺」展を、11月14日に観たという記事だ。 修理完成記念、甲・乙・丙・丁 四巻全て公開ということで、長蛇の大行列だったらしい。 この展覧会、4月 28日~6月7日開催で特別展「鳥獣戯画―京都・高山寺の至宝―」として東京 国立博物館に巡回するそうだ。

 平安時代から鎌倉時代にかけての作、作者不詳(一般に鳥羽僧正覚猷(かく ゆう)作といわれるが…)。 一番有名な甲巻では、カエルとウサギが遊び、乙 巻では想像上の龍や麒麟が描かれ、丙巻では人間も登場している(一般に「鳥 獣戯画」というが、甲巻を指し、全四巻では「鳥獣人物戯画」になるわけだ)。  その丙巻は別々の絵巻を繋げたと考えられて来たが、実は前半と後半は、もと もとは一枚の紙の表と裏に描かれたものであることが判明したと、展示で説明 されていたと、マーちゃんは書いている。

私は10月26日NHK『日曜美術館』「“奇想の絵巻”誕生のなぞ~鳥獣戯画 ~」で、その辺の事情を見た。 鳥獣戯画は、今年4年がかりだった、明治以 来130年ぶりの修復を終えた。 短い和紙を何枚もつなぎ合わせ作られた絵巻 は、接着する糊の寿命が来るたびに修復が必要だ。 今回の修復で、担当した 人の発見や、初めて科学の目が向けられたこともあり、誕生の謎の解明に結び つく、いくつもの新たな真実が浮び上がってきたという。

装潢師(そうこうし)の大山昭子さんは、絵巻にある滲みの形が、烏帽子の 形に似ていることに、気付いた。 そこで人物の部分と合わせてみると、ぴっ たり重なった。 一枚の紙の表裏に描かれた絵を、「あい剥ぎ」という技法で、 二枚に分けていたのだ。 紙の材質も、貴重な絵などに使われたものに比べる と、悪くて、当初(貴族や寺の注文で描かれたものでなく)、貴重なものと思っ ておらず、自分で楽しむ絵として描かれたものと考えられる。 大山昭子さん は、「あい剥ぎ」の技法を実際にやって見せていた。 長く「獣絵(けものえ)」 「シャレ絵」と呼ばれていて、「鳥獣人物戯画」と呼ばれるようになったのは、 明治以降のことだそうだ。

所蔵する高山寺に絵巻が入ったのは、13世紀初めで、本尊に等しい存在であ る。 (私は「こうざんじ」と言っていた。番組でNHKは「こうさんじ」と 言ったので、『広辞苑』を見たら「こうざんじ」だった。しかし、栂尾山高山寺 の公式ホームページは、「とがのをさん こうさんじ」であった。) 高山寺の 中興の祖で、実質的な開基とされるのは、鎌倉時代の華厳宗の僧、明恵(みょ うえ)上人(1173-1232)である。 番組で伊藤大輔名古屋大学は、国宝「明 恵上人樹上坐禅像」に関して、こう説明した。 自然の中に一人の人間を小さ く描いているが、人も、動物も、植物も、みな平等の世界というのが、華厳の 思想であり、あらゆるものが支え合っている。 境目をつくらず、何物にも囚 われない自由な心を表わす。 明恵は、雑念を払うため、自分の右耳を切り落 とした。 母の画像に「みみなし法師の母御前也」と記している。