古今亭志ん輔の「大山詣り」前半2017/07/07 07:17

 志ん輔は、薄緑の着物に、濃い緑の羽織。 信心じゃ、しようがないな。 大 山詣り、伊勢原あたりから上がって行く。 小田急線はないけれど、そんな遠 くではない。 先導師、先達さんが講を率いて、張り合って登った。 旅館を 兼ねている料理屋に、今も、上野鈴本、末廣亭、神田連雀町なんて木の看板が ある。 青年部に新入りが入ってくる。 町内から代参に行かせて、先輩は下 で遊んでいたりする。

 先達さん、こんちはー、こんちはー、こんちはー。 今年も、お山しよう。  長屋のかみさん連中が、物騒だって言うんだ、妙な屑屋が入って来て、何か探 したりする。 そこであっしが考えた、一人、屈強な人間に残ってもらいたい。  熊さん、睨みを利かしてくれないか。 眉毛が太くて、目ん玉が大きい、唇が 厚い、頑張っておくれよ。 いやです、俺も一緒に行くよ。 本当のことを言 おう。 山行くの、やめな、毎年喧嘩になる、元はお前だ。 喧嘩しなけりゃ あ、いいんじゃないか、俺は男だ、しないったら、しない(と、床を叩く)。 去 年も、そこを叩いた。 頼むよ、先達さん。 決め事をこしらえよう。 腹を 立てたら、二分ずつ取る。 手を上げたら、坊主にする。 二分は、一両の半 分、十両盗んだら首が飛ぶ、大変な金だ。 ちょんまげは、大切なものだった。  中国の弁髪から来たということだが、他では言わないほうがいい。

 明日は江戸、神奈川の宿で一泊した。 騒ぎの起きないわけがない。 先達 さん! 今、日記をつけてるところだ。 日記もハッカもない、騒ぎが起きて いるよ。 また熊か。 相手は誰だ。 俺だよ。 話を聞いてくれ、俺と留公 が湯に入ってた。 二人でいっぱいの湯に、熊がへべれけで来て、俺の所に入 った。 毛むくじゃらのケツ、ズボッと入れて、唄、歌い始めたんだ。 いき んで、一発ボコッとやった。 臭せえな。 今、嗅いだ屁を返せ。 こんなぬ るくせえ湯に入っちゃあいられねえ、と出る時、留公の頭を蹴って、喧嘩にな った。 手桶で頭を、二つ三つ張り倒してやろうと思ったら、手桶取られて、 五つ張り倒された。 ドッタンバッタン、やったんだ。 腹立てたから、二分 置こう。 野郎を坊主にして下さい。 まあまあ、熊に言い聞かせるから。 先 達さん、夕飯です。 いま行くよ。 先達は酒飲んで、熊公のこと、すっかり 忘れてた。

 剃刀、貸してくれた、女に会いに行くんでって言ったら。 奴は、寝てる。  憎体なツラして。 下で水を貰って来て。 酒で湿しちゃいなよ。 いい香り だね、旨めえよ。 俺達のと違うよ、どこで手に入れてくるんだろう。 もう、 呑まない、プッ。 どれどれ、どれどれ、よく切れるね、ワーーーツ、ツルツ ルになっちゃった。 いい塩梅に、寝返りを打った、きれいになった。 ざま あみやがれ。 蚊帳かぶせとこう。

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