藤井聡太四段と人工知能(AI)の活用2017/07/01 07:11

 藤井聡太四段(14・中学3年生)が30年ぶりの新記録、公式戦29連勝を達 成した急成長の裏には、人工知能(AI)の活用があったと報道したのは、翌27 日の朝日新聞朝刊だった(村瀬信也、深松真司記者)。 藤井四段の強さは、第 一に詰将棋で鍛えた圧倒的な終盤力。 第二に先が見通しにくい序盤戦や中盤 戦の「隙のなさ」であり、その背景には、トップ棋士を破るまでに急成長した 人工知能(AI)の活用があるとみられる。 藤井四段は昨年5月、コンピュー ター将棋に詳しい千田翔太六段(23)に勧められ、ソフトを使い始めたという。  NHKスペシャルでも見せていた、グラフで表示される「(先手と後手どちらが 有利かを示す)評価値が局面ごとに示されるのが革新的だった」と、振り返っ ているそうだ。 自分の対局をソフトに検討させ、形勢判断に役立てる。 自 分の点数を大幅に下げる手を指していることもあった。 ソフトと対戦するこ ともあるが、「自分も強くなったが、ソフトははるかに強くなっている。もっと 強くならねば」と言っている。 一方、ソフトを勧めた千田六段も、藤井将棋 について、局面を判断し、指し手を決める上で「ソフトの影響を受けている」、 多くの指し手で「ソフトの着手と一致する」と指摘しているという。

 将棋の人工知能(AI)で最強の一つとされるポナンザの常駐するアプリ「将 棋ウォーズ」を運営する「HEROZ」の林隆弘社長(40)は、プロ棋士の棋譜 をポナンザにかけて分析、「試行段階ですが、ポナンザの示す最善手との『一致 率』や『エラー率』(悪手の割合)を基準に強さを測ってみると、藤井四段はす でに羽生善治三冠と並ぶトップクラスの水準です」と話しているそうだ。

NHKスペシャル「人工知能 天使か悪魔か 2017」は、人工知能(AI)が人 間の新たなツールとして役立つか、韓国で国家運営に応用する研究が行われて いることを伝えていた。 国民が最も望むところに、最適な予算を配分する。  人と会話するロボット「ソフィア」に、各国の憲法、法律、国防、世界情勢、 経済指標、ネット上の意見、等々の「教師データ」を学習させる。 その答は 政策提言の一つであり、最終的には人間が決断する。 将来的には、人工知能 (AI)が国民と対話して、国民から意見を吸い上げ、最適な政策を国民に提案 する、「人工知能(AI)が真の民主主義をつくる」構想なのだそうだ。

桂三木男の「雛鍔」2017/07/02 06:51

 6月27日は、第588回の落語研究会。 いかにも梅雨らしく蒸し暑いが、 帰りには雨が降っていなくて助かった。

「雛鍔」       桂 三木男

「蛙茶番」 朝也改メ 春風亭 三朝

「野ざらし」     橘家 圓太郎

       仲入

「熱血怪談部」    林家 彦いち

「大山詣り」     古今亭 志ん輔

 桂三木男、白い模様の入った薄青色の着物に、紺の羽織、早口で9月に真打 に昇進、祖父と叔父の三木助を継ぐ予定と。 3月に真打昇進して、この後出 る三朝(さんちょう)兄(あに)さんがいい人で、面倒見がいい、自分のもあ って忙しいのに、ひろ木兄さん(林家)の真打昇進パーティーを手伝っていた。  19歳で入門して33歳、14年、何回破門と言われたろう、見習いの半年、酒は 禁止と言われて呑まなかった。 師匠(馬生)が浅草演芸ホールに出ていて、 近くの蕎麦屋で日本酒を二合頼む、師匠は酒好きだが量は呑まない、お前も呑 みなさいと言われた、それで呑んだのが最初。 温厚な師匠で…。 大師匠の 先代馬生も温厚、トリを取っていた楽屋で前座が三人、ギャンブルをして、勝 った負けたとやっていた。 ドロドロと、追い出しの太鼓が鳴った。 誰が叩 いたか…、先代が叩いていた。

 早かったね、仕事の方はどうだった。 やんなっちゃったんだ、松の木に登 ってちょっと一服していたら、お屋敷の若様がお通りになるから降りろと言わ れて、池の脇で一服していた。 可愛らしい紋付き袴で、若様が若侍に取り囲 まれてやってきて、銭(ぜに)を見つけた。 田中さんに、爺、これは何じゃ。  おおように育っている。 田中さんは流石、若様はいったい何だと思し召しま すか。 丸くて四角い穴が開いている、裏に波の模様、お雛様の刀の鍔ではな いか。 不浄な物なので、お捨てを。

 田中さんに、利発な若様ですね、おいくつで、と聞いた。 お八歳になられ る。 お八歳、来年はオクサイで。 金坊と同い年だ。 金坊はいつも銭くれ、 銭くれって言って、金の亡者だ。 どうしてここまで違うのかと思うと、やん なっちゃってな、帰って来た。 お前さん、若様には若侍なんかがいて遊んで くれる、金坊は遊んでくれる人がいないから、銭に遊んでもらっているような もんなんだよ。 俺は、子供らしい上品な心を持ってもらいたいんだ。

 金坊はどうした。 後ろで、聞いているよ。 お屋敷の若様は、銭をお雛様 の刀の鍔じゃないかと言ったんだ、お前にそんなことが言えるか。 そこに銭 を落しな。 何を! 銭、おくれよ。 やらない。 銭、おくれよ。 やらな い。 おっ母さんが上げるよ、遊んでおいで。 お屋敷みたいに、おおように 育てるんだ。

 ごめんよ。 お店の旦那で。 話があって来た。 こないだ啖呵切ったそう だね、こんな店はこちらから出入り止めだ、と。 あれは私がいけなかったん だ、庭の植木の入れ替えに、つい気が急いてしまって、番頭が知っている植木 屋があるというから頼んじまった。 その職人の仕事を、お前さんが見た。 す まなかったね。 頭を上げて下さい。 一杯やってお店の前を通ったんで、あ んなことを言っちまった、帰って酔いが醒めたら、しまった親父の代からのお 得意様、謝りに行かなきゃあと思ったが、つい行きそびれて、すみません、こ ちらの方こそ、もう一度仕事をさせて下さい。

 お茶出せ、羊羹を出せ。 こんなの拾っちゃった、丸くて四角い穴が開いて いる、裏に波の模様、お雛様の刀の鍔だと思うんだけど。 親方、お宅のお坊 っちゃんか、お金を知らないようだな。 ウチにもあれぐらいの孫がいるが、 いつもジージ御足をだ。 坊や、こっちへおいで。 これでもって好きなもの を買って、いや、この子の手習いの道具一式持って来て上げるから。  金坊、まだ持っているのか、そんな丸い物はうっちゃっちゃえ、不浄な物だ から…。 やだい、これで焼芋買って食うんだから。

 三木男の「雛鍔」、硬くなっていたのだろうか、あまり感心しなかった。

朝也改メ春風亭三朝の「蛙茶番」2017/07/03 07:24

 三朝(さんちょう)、オデコが広く、髪の毛が三角にとんがっている。 噺家 は名前と顔を覚えてというけれど、途中で名前が変わる。 15年朝也で、三朝、 梅酒屋から豆腐屋になった。 皆様の共通点は一つ、落語好きということだろ う。 凝り過ぎるとよくないけれど、凝らないとわからない。 お芝居も、自 分でやってみたくなる。 素人芝居、役でもめる。 勘平をやりたい、俺も勘 平、俺も勘平、俺は与市兵衛の婿養子、私はお軽の亭主、36人みんな勘平。 何 だこの芝居は? 勘平式だろう。

 伊勢屋の若旦那が来ない。 役もめじゃないのか。 今年はくじ引きで決め たのに。 セリフのない役、ガマガエル。 ガマガエルを、くじに入れたのか い、怒るのは当たり前だ。 うちの小僧でどうだ。 定吉、番頭さんがお呼び だ。 お前は芝居が好きだそうだな、お店の芝居に出てもらいたい。 去年、 出たいと言ったら、旦那に十年早いと叱られた。 お小遣い、来年の休みも一 日多くやろう。 そのお小遣い、番頭さんの懐から出るんですか、それとも帳 面をドガチャカするんで…。 余計なことを言うな、ガマガエルだ。 えっ、 ガマガエル、虫じゃありませんか。 いやなら出なくていい、お小遣いも来年 の休みもなしだ。 出ます。 着ぐるみを着て、きっかけを教わる。 『天竺 徳兵衛韓噺(いこくばなし)』の「忍術譲りの場」、天竺徳兵衛が赤松満祐の幽 霊から、忍術を伝授され、「デイデイ、ハライソハライソ、ドロッドロッときた ら、ピョコピョコ、ドロピョコ」と、ガマガエルに化ける場面だ。

 定吉、建具屋の半公を呼んで来てくれ、舞台番なのに来てない。 舞台番?  下手の端の半畳に座って、観客が騒ぐと制止する役だ。 半ちゃん、いますか?  半次は留守だ、いても、いねえよ。 いるじゃない。 半次の幽霊だ。 てめ えのダンツクに言ってくれ、化物の芝居はやらないって、行かないと目ん玉に 指突っ込んで掻きまわすぞ。

 あいつは只の馬鹿だ、うち一軒で飯食ってるんだ、やるってことはやる。 小 間物屋の美ィ坊に惚れて、足袋屋の看板、片っ方だけ出来て喜んでいる。 こ う言うんだ。

 往来で美ィちゃんに会ったら、建具屋の半ちゃんが人の嫌がる舞台番を引き 受けるんですって、と聞いた。 貰い物の煎餅だけれど、食え。 美ィちゃん、 ポッと頬を赤らめて、素人がおしろいを塗りたくって、ギッタンバッタン目を 剥くのより、おしろいっ気のない舞台番をやるなんて、粋で、いなせで、さす が神田っ子だって、言っていた。 来るの、来ないの? ファイナル、アンサ ー。 バカヤロ、美ィ坊がそんなこと言ったか、すぐはダメだが、行くよ。 去 年の祭の緋縮緬のふんどしを憶えているか。 縮緬、くわえて引っ張るとチリ チリ音のする、坪いくらってもんだ、質に入れて、銭がない。 入れ替え物を 入れて、出しておいでよ。 これしかないの、汚いお釜だな。

 手拭、肩に湯へ、磨いてから行く。 人の嫌がる舞台番、見せるもの見せて、 落ちを取ろうってんだ。 縮緬のしぼがなくならないように、油ッ紙にくるん で、頭にのせる。 番台で預かっておくよ。 建半、来てるよ、汚たねえケツ だ、毛が生えて、コオロギでも飼ってんのか。 美ィ坊が帰っちゃあいけない、 急いで帯を締めながら、斜っかいになって駆け出した。

 そこへ行くのは半次じゃないか。 鳶頭、見せたいものがある。 ウチの娘 を連れてきた、芝居を観たいというんで。 アッ! 着物を下ろせ。 しようが ない、帰ろうじゃないか(と、娘の手を引く)。

 何だ、美ィ坊いねえじゃないか。 大宮さん、東北線乗り換え。 錺(かざ り)屋の金さん、カザ金さん、舞台番を見ろ、上はいいから、下を見ろ。 糝 粉(しんこ)細工じゃないんだろうね。 立派なもんだ、馬がごめんと謝った。  半ちゃん! ご趣向! 日本一、大道具!

 定吉、早く出ろ。 ガマガエルは出られません、半ちゃんの股グラで青大将が狙っています。

橘家圓太郎の「野ざらし」前半2017/07/04 07:12

 玉虫色の羽織で出た圓太郎、一生懸命やる人が好き、浅田真央、宮里藍、当 人が飛びたい、一生懸命やって失敗する人が大好き。 ちょっと間違ってもい いから、落語はいい。 先祖から受け継いだ負の遺伝子が、娘に。 女なのに 骨格が一緒、同じふくらはぎをしてる。 小学生、天真爛漫に生きている。 浅 田真央の父親になりたい。 キャンプに行こう。 練習があるの。 親子の対 話のない21年。 目と目を見つめ合っての会話。 真央は、引退します。 よ くやった。 真央が胸に飛び込んできた。 タダの変態か。

 ゆんべのダマは何だい、女、婦人…、向島から来たとか。 先生、おまはん の所を、仕事のノミでガリガリやって覗いた。 いい女だ、年の頃なら、十六、 八。 七は? 七は、先月流した。 どこの女だ、あの女。 目が血走ってい る。 実は、こういうわけだ、向島にハゼ釣りに行った。 遠山寺の鐘がゴー ーンと鳴ったな、岸辺を洗う水の音、パッと出た! ワッ! 帰るのは構わん が、今、私の紙入れを懐にしまったな、置いて行け。 岩田の隠居の柱時計を 売ったそうだが…。 続きを。 パッと出たのは、カラスが一羽、見れば人骨 野ざらし、されこうべだ。 手向けの句を言い、ふくべの残り酒をかけたら、 骨(こつ)に赤味がさした。

昨夜晩く、浅草浅草寺の鐘が陰に籠って物凄く…、誰かが訪ねて来た。 尾 形清十郎、歳は取っても腕に歳は取らせぬ、槍を小脇に抱えてタッタッタ。 嘘 つけ、先生の所がそんなに広いか、俺んちと同じだ。 あなた様の回向で浮か ばれました。 ゆうべ一晩、足をさすらせ、肩を叩かせ、四方山の話にふけっ ていた。 あの女、この世の者ではない。 いい女だったな。 あの世でも、 この世でもいい、器量のいいか、悪いかにかかっている、この助平ジジイ。 間 抜けの句というのを、教えろ。 手向けの句だ。 この竿、借りて行くよ。

途中の酒屋で二合ひっかけ、向島へ。 太公望がずらっと、並んでる。 何 の骨、釣ってんだ? お魚、釣ってる。 いい女の骨か? 色気違いですよ。   サーーッ、コイコイコイ。 あんた、餌をつけなかったでしょ。 餌なんか要 らない。 ♪鐘がボンと鳴りゃあ、上げ潮ォ南さ、カラスがパッと出りゃコラ サノサ、骨がある、サイサイ。 そのまた骨にさ、酒をばかけてさ、骨がべべ 着てコラサノサ、礼に来るサイサイそら、スチャラカチャンたらスチャラカチ ャン!

橘家圓太郎の「野ざらし」後半2017/07/05 06:30

 スチャラカチャンたらスチャラカチャン! お静かに願います、魚が集まっ たばかりなので。 魚に耳あんのかい、魚の耳を引っ張って、ここまで持って 来い。 ♪スチャラカチャンたらスチャラカチャン。 掻き回さないで。 掻 き回すってのは、こうやるんだ(グルグル)。 カラコンカラコン、こんばんは!  こっちへ、へェんない。 開けずには入れまい、開けずに入れるのは、風か、 幽霊か、すかしっ屁だ。 何だか、恐い。 ガラガラ、ガラガラ、上がってい いのかい。 手前が決めろ、上がれば、俺のかかあだ。 知らないから…、と 座る。 この人、水ッ溜りに、座っちゃいましたよ。 周りの女がうっちゃっ ちゃおかない。 タダおかないよ、お仕置き、つねっちゃう、ツネ、ツネ、ツ ネ。 痛い、痛い! お詫びに、コチョコチョ。 くすぐったいよ。 アッ、 鼻を釣っちゃいましたよ。 大物が釣れましたね。 どなたか、取ってくれま せんか。 手前で取るよ、エイッ! 血が出た。 これはハナジにならん。 今 度は、針を取っちゃいましたよ。 何かやってますよ。 あれオマルでしょ。  オカワサン、引き寄せて、中の水をば、コラショノショ!(と周りの人に掛け る) もう、帰りましょ。 帰れ、帰れ! 何か、置いて行ったよ。 弁当だ。  葱、卯の花、焼き豆腐に味が染みて美味い。

 鐘がなったよ。 カラスが出た。 ムク(椋鳥)ちゃんかい。 カラス嬢さ んは休みで、行っといでって。 ムクちゃんがどこから来たか、葦をかき分け て、骨を探せ。 一、二、三組あるね。 まん丸で、面が長いのがいい。 大 柄だね、大きな女が好きだ、甘えん坊だから。 お前の為の酒だ。 俺んちは、 浅草門跡様の裏、乾物屋の横を入った長屋だ。 近くの舫い船に寝ていたのが 野幇間で、それを聞かれた。

 湯を沸かして、と、ゆんべも今時分だ。 こんばんは! ヘイ、ハッ、すま ない、どーも、お見えになりますよ、姫君が。 障子破れて、棧ばかり。 家 の中にいながら、星が見える。 お前は、いったい何だ? 見番から出ている 新朝というタイコで。 そうか、あれは馬の骨だったのか。