瀧川鯉昇の「蛇含草」前半 ― 2019/04/30 06:37
気温より体温の方が高い夏をいくつか過ごしても、高座着には袖があって、 ノースリーブという時代は来ない。 せいぜい、団扇でしのぐ。 40年前、扇 風機が我が家にやって来た、近所の会社が倒産して…、でも、首が回らない、 同じ方を向いている。 翌年、二代目が来た、時代を感じる鉄製で、切替ボタ ンが三つ、強中弱でなく、甲乙丙。 触らないのに、回転が変わる。 力が抜 け、そよ風に逆回転する。 モーターが発熱するので、止めたら、部屋の温度 が5度下がった。 夫婦交代で、モーターを扇いでいた。 数年前、クーラー が入ったけれど、長年の習慣で、団扇で扇いでいる。
猛暑で、外も暑い。 バス停で待っていて、バスが来たので乗ると、空いて いる南側は直射日光で、体感が50度。 私は一旦陽に当たり、このへんが(と、 頭のあたりに手)照り返しの二度照りで100度、往生する体験が夏の内に何度 かある。 あなた、アイス買って、今、食べたい。 バスの中だぞ、あと三つ で着くから。 今、欲しい。 ここにブッカキ氷を持ってますが…。 ありが とうございます。 どうぞ。 チュルチュルチュル。 あなた、美味しいわ。 もう一つ。 チュルチュルチュル。 もう一つ、頂けますか。 私はいいです が、中の猫の死骸が持つかどうか。
珍しい形(なり)で来たね、とご隠居さん。 この甚平、自分で拵えた、大 きめのタオルでね、これ着て湯へ行くと便利だ、これで体を洗って、絞って背 中にかけて帰ると、涼しいし、乾く。 譲りましょうか。 いいよ。 俺の所 は屋根に穴があって、お天道様が入って来るから、家の中で十分日焼けする。 ここの家はいいね、三方窓があって、風が来る。 俺ん家は、ビューーッとい う風が抜ける時期が、ずれている。 6月から9月は止む、11月12月からは 吹き荒れる。 で、夏の暑さって言ったら、ない。 ここへ来るのが楽しみで。 あそこの風鈴、チリリンと音がする。 家のは音色が違う、コツコツコツン、 ガサガサ、ガタ。 8年前まではチリリンと鳴っていたが、紐が切れて落っこ って、ひびが入った。 新しいの、買ったら。 買ってくれますか。 あの風 鈴の紐に結わえてあるのは、ご隠居のへその緒ですか? あれは蛇含草だ。 越 後の旅で、大蛇、ウワバミが、谷間に下りて、人間を一人呑み込んだ。 あの 草をペロリペロリとなめると、ふくらんだ腹がおさまって、草むらに消えた。 人間が溶けるんだろう、ウワバミの胃薬ってところだ。 虫除けのおまじない かと思ったよ、半分もらっていいですか。 甚平、入れるところがないから、 ここ(襟の所)に結わえて行きます。
瀧川鯉昇の「蛇含草」、前半までで平成は終り、後半は令和に。 小人閑居日 記も、虚子の句にならえば、「平成と令和貫く落語棒」。
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