国際子ども図書館と黒田記念館の横を通る2020/12/14 07:13

 国際子ども図書館と黒田記念館の横を通って、奏楽堂から東京都美術館の方へ進んだ。 実は、この道、通ったことがなかった。 国際子ども図書館については、中島京子さんの小説『夢見る帝国図書館』(文藝春秋)を読んで、「等々力短信」第1122号『ベアテの贈りもの』(2019(令和元)年8月25日)を書いた。 ここは幕末三度洋行した福沢諭吉が西洋列強の「ビブリオテーキ」を紹介し、明治政府の文部官僚永井久一郎(荷風の父)が近代国家には国立図書館が必要だと奔走し、曲折を経てようやく明治39(1906)年に開館した「帝国図書館」の理念と建物を受け継いでいる。 中島京子さんの小説『夢見る帝国図書館』(文藝春秋)は、何度も図書館の費用が戦費に食われ、リベラルアーツと国威発揚的国策が衝突する、苦難の歴史を背景にして描かれた。 アメリカ占領下の昭和21(1946)年2月4日、ジープを駆ってGHQ職員のアメリカ人女性ベアテ・シロタ(22)が「憲法関連の本」を探しにやって来る。 マグナ・カルタから始まる一連のイギリスの本、ワイマール憲法、北欧諸国の憲法を始め、ありったけの憲法関連書籍を借り出す。 以後の運命の9日間で、日本国憲法の「GHQ草案」を作り上げた25人の民生局員にとっての、最重要参考文献だった。 中島京子さんは、これは帝国図書館にとって、最後にして最大の仕事だったかもしれない、と書く。 実はベアテ、隣の東京音楽学校でピアノ教授をしたレオ・シロタの娘で、5歳から15歳まで日本で暮していた。

 国際子ども図書館に並んで、黒田記念館があるのを知らなかった。 東京国立博物館に属し、洋画家黒田清輝(1866(慶応2)年~1924(大正13)年)の遺産と作品が国に寄贈されたことにより1928(昭和3)年に建てられた施設で、館内の黒田記念室にはその画業の初期から晩年までを一望できるように油彩画や素描が展示されているという。 2月28日までは、18歳から27歳のフランス留学中に制作され、《読書》と並ぶ力作とされる《マンドリンを持てる女》(1891)を見ることができる。 なお、1月13日~24日には、《読書》(1891)、《舞妓》(1893)、《湖畔》(1897)、《智・感・情》(1899)も展示予定だそうだ。

 黒田記念館の左端、京成電鉄の旧博物館動物園駅の前に、上島珈琲店が店を出していた。