80歳、大塚宣夫さんの実感2022/07/09 07:01

 『医者が教える 非まじめ介護のすすめ』の大塚宣夫さんは、高校の同級生だ、80歳になったという。 60歳を過ぎて、まったく仕事を辞めて、閑居生活に入った私などとは、比べることはできないけれど、この本の中で、こんな正直な告白をしている。 大きな病院を二つも経営しているのに、50歳過ぎに一度、ある日ふと、なんとなく頑張りがきかない、目の前の課題に立ち向かう気力がない自分に気づいたという。 そして、理由もなく、ふさぎこんでしまう。 1年程度で収まったが、それを機に、徐々に下降線……。 ゆるやかにその変化を実感する60代、70歳を経て、75歳。 75歳を節目に、目に見えて気力・体力ともにガタッと落ちた。

 この変化は明確で、頑張れないことはもちろん、パッと言葉が出てこなかったり、食べる量や飲む量が一気に減ったり、何かしら大きな病気が発覚したり、人によっては認知症の問題も身近になるなど、現代においてはだいたい75歳過ぎからが、いわゆる本当の意味でも〝老後〟と考えていいかもしれない、という。

 家族やスタッフは、大塚さんの健康を気遣って、サラダを食べろ、野菜が足りない、脂や酒は控えめに、朝食は食べていけと、たくさんアドバイスしてくれる。 でもね、80歳を過ぎて栄養バランスや健康に気遣ったとして、その効果がでるのは数年先、寿命には大差ないだろう。 暴飲暴食できる体力も胃腸も強くないので、好きなものを好きなだけ食べさせてくれ、これが本音だ(笑)という。

 以前、「自分は十分長生きしたから、いつ死んでもいい」が口癖の93歳の女性がいた。 それなら、明日お迎えが来てもいいかと聞くと、「それはちょっと困る。いつ死んでもいいのだけど、心の準備があるから3か月は欲しい。欲を言えば3年ですかね。」 大塚さんは、高齢者の本音を垣間見た思いがしたという。