吉村昭さんの長篇小説、書き出し三例2022/08/22 07:03

 さっそく私は、本棚の手近なところにあった三冊の吉村昭さんの本を見てみた。

 『落日の宴 勘定奉行川路聖謨』(1996年・講談社)
「嘉永六年(一八五三)十二月三日五ツ(午前八時)、川路左衛門尉聖謨(としあきら)は駕籠に乗り、赤間関(下関)の本陣をはなれた。行列は、家並の間を港の方へむかってすすんでゆく。」

 『生麦事件』(1998年・新潮社)
「江戸高輪にある薩摩藩下屋敷の生い繁った樹木から、蟬の声がしきりであった。」

 『暁の旅人』(2005年・講談社)
「安政四年(一八五七)八月十九日、道の両側に繁る樹木から蜩の鳴き声がしきりであった。晴れの日がつづき、その日も雲一片もない快晴で、空は青く澄んでいたが、日が傾き、空はきらびやかな茜色に染っている。」

 『暁の旅人』は、帯に「日本近代医学の開祖・松本良順。信念を生きた、波乱と孤高の生涯。」「幕末の長崎で西洋医学を学び、維新に揺れる日本を医師として自らの信ずる道を歩んだ人、松本良順。/新撰組に屯所の改築をすすめ、会津藩で刀傷、銃創者の治療を指南し、さらに榎本武揚に蝦夷行きを誘われる――。/医学の道に身を捧げた彼の数奇な運命に光を当て、その波乱と孤高の生涯に迫る感動の歴史長編小説。」とある。

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