私の上に降る雪は2008/01/24 07:58

 昨日の朝は、ようやく予報が当たって、東京も雪になった。  雪が降ると、誰でもが詩人になる。 まして中原中也は詩人だから、傑作を 残し、雪が降ると、それは普通の人の口の端をついて出る。

 雪が降るとこのわたしには、人生が、

 かなしくもうつくしいものに――

 憂愁にみちたものに、思へるのであつた。

                        (「雪の賦」)

     幼年時

 私の上に降る雪は

 眞綿のやうでありました

     少年時

 私の上に降る雪は

 霙のやうでありました

     十七―十九

 私の上に降る雪は

 霰のやうでありました

     二十―二十二

 私の上に降る雪は

 雹であるかと思はれた

                      (「生ひ立ちの歌」)

ホテルの屋根に降る雪は

 過ぎしその手か、囁きか

 ふかふか煙突煙(けむ)吐いて、

 赤い火の粉も刎ね上る。

                      (「雪の宵」)

 それで、普通の人も、窓から外を見ていて、三句を得た。

  雪降ればチューリップは芽を出してをり

  雪降つて芝生の長さが気にかかる

  雪の朝花束めけるヴィオラかな