沖縄の地政学的な位置2015/01/19 06:37

 図書館で、沖縄・琉球の歴史についての本を借りて来た。 [1]上里隆史・ 喜納大作著『琉球王朝のすべて』(河出書房新社・2012年)と、[2]鎌倉英也・ 宮本康宏著『クロスロード・オキナワ』(NHK出版・2013年)。 副題は、[1] が「知れば知るほどおもしろい」、[2]が「世界から見た沖縄、沖縄から見た 世界」。 [1]の著者は沖縄・琉球の歴史などの研究者、[2]の著者は沖縄関 連のドキュメンタリー番組4本を作ったNHKのディレクターである。

 まず、沖縄の地政学的な位置である。 沖縄県に属する島の端から端まで測 った距離は、東西に約1000キロ、南北に約400キロもある。 この広大な海 域に、約160の島があり、49の島に約140万人(2012年4月現在)が住んで いる。 県庁所在地の那覇がある沖縄島に約9割の人が住む。

 島と島の距離も、かなり離れている。 例えば、那覇市から石垣島までは約 400キロ、さらに遠い与那国島までは約500キロもある。 この距離を他の地 域と比較してみると、那覇-石垣間は東京-大阪間と一緒で、那覇-与那国間 は大阪-熊本間と同じ距離だ。 九州の南端とも、だいぶ離れている。 那覇 と鹿児島市の距離は650キロで、東京-広島間と同じ距離だ。

 沖縄県の領域以外で、かつて琉球王国の範囲だった島々がある。 沖縄本島 の北に位置する奄美群島だ。 奄美大島、喜界島、徳之島、沖永良部島、与論 島などで、現在は鹿児島県になっている。 琉球王国は、1609(慶長14)年 に薩摩藩島津氏の武力侵攻を受け、その時には奄美群島は琉球から切り離され てしまった。 明治になっても、奄美は沖縄県になることはなく、そのまま鹿 児島県になり現在に至っている。

 [2]に、二枚の地図がある。 一枚は東京を基点とした地図、もう一枚は 沖縄を中心とした地図である。 それぞれに500キロの同心円が描かれている。   沖縄を中心とした地図を見ると、明らかになることがある。 中国や東南ア ジアがぐっと身近に迫り、日本本土の列島や朝鮮半島も沖縄を取り巻く太平洋 上のひとつの地点として見えてくる。 沖縄の島々は、周囲の国や地域から近 く、東南アジアの交流にとって格好の場所にある。

 テレビのニュースで、米軍基地問題について沖縄県の理解を得るため、東京 から那覇に来た首相や大臣が沖縄県知事と会談する場面がある。 その県庁知 事応接室の背景に、墨痕あざやかな書の屏風がよく映し出される。 15世紀半 ばの琉球王だった尚泰久(たいきゅう)によって鋳造され、首里城正殿に提げ られた鐘に刻まれていた銘文だそうだ。 その冒頭には、かつての琉球王国が 独立国家としてどういう誇りを持ち、どんなアイデンティティーを育みながら、 豊かさを求めようとしていたか、知ることができるという。

 琉球国者南海勝地 而鐘三韓之秀 以大明為輔車 以日域為唇歯

 在此二中間湧出之蓬莱島也 以舟楫為万国之津梁 異産至宝充満

――琉球は南海の恵まれた地にあり、朝鮮の優れた文化を集め、中国とは頬骨 と歯茎のように重要な関係にあり、日本とは唇と歯のような密接な関係にある。 琉球はこのふたつの国の中間にある理想の島である。船を通わせ、あらゆる国 の懸け橋(万国之津梁)となり、各国の産物や宝が満ち溢れている。

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