春風亭三朝の「やかんなめ」前半2019/06/02 08:16

 三朝(さんちょう)は前名朝也、一朝の弟子で、オデコが広く、髪の毛が三 角にとんがっている。 昭和生れ、平成の終りに誕生日を迎え40になった、 前座に話したら、ものを知らない、還暦ですかと言う。 違うよ。 アラフォ ー? ジャストだ。 不惑だよ。 新しい元号、決まったんですか。

 で、初めて人間ドックへ行った。 人間ドック専門病院、貼り紙がしてある、 「芸能人がいっぱい来ます」。 検査着に着替える、ホテルのパジャマのような ものでなく、ジャージの上下。 電光掲示板のようなものを首からぶら下げる。  三浦さん、私は本名が三浦、問診と、次は視力検査です。 視力検査、顕微鏡 のようなものを覗く。 視力はどのくらいありますか? それを測るんでしょ。  眼鏡をしてるから、0.3くらいかな。 眼鏡外して下さい。 何にも見えない んで、ハンドルを倒すのを、勘でやった。 それから聴力検査。 耳はいいん ですね、と。 胃の検査。 発泡剤を飲んで、バリウムを飲む。 胃が縮んで ますんで、もう一度発泡剤を。 右を向いて、行き過ぎたんで戻ります、戻り 過ぎ。 初めてなんで、すみません。 私も、初めてなんですよ。 検査結果 が楽しみで。

 今は一病息災といわれる時代ですが、昔は四百四病といった。 何にでも葛 根湯を処方する葛根湯医者の小咄をやり、「合薬(あいぐすり)」という民間療 法があって、フグの毒に中った時に泥の中に埋めるのが有名だ、と展開。 男 の疝気と女の癪(しゃく)というのがあって、山田五十鈴と長谷川一夫が似合 いそう。 癪の合薬には、マムシ指という太い親指で押すのと、男のフンドシ できりりと絞るのが効く。

 お内儀さんが女中を二人連れ、向島へ梅見に出かけた。 広い野っ原、春先 のことで、とても心持がいい。 すると蛇が目の前を、ニョロニョロと横切っ た。 とたんにお内儀さん、癪にさされて倒れ込む。 お花さん、やかんがな いかしら、困ったわね。 そこへ、あちらから四十五、六の立派なお武家が、 主従仲良さそうに何か話しながらやって来た。 お武家様のおつむりがつるり としてやかんに似ている。 くやしいわねえ、あれがやかんなら、お内儀さん、 しっかりして。 失礼な奴、手討にしてと言われたら、その時はその時、お願 いしてみましょうか。