古今亭菊之丞の「茶の湯」前半2023/04/28 07:11

 菊之丞は紫の着物、自分の追っかけにバンドをやってる人がいて、あいみょんとか、緑黄色社会(紅白に出た4人組)の追っかけもやっていたのだが、最近は売れちゃったので行かない、と。 だが、私の会には来ている。 落語会は、戦後、最も多い数だと言う。 避難訓練寄席というのがある。 高座に上がって、5分で警報が鳴る。 客は避難する。 那須塩原、足湯寄席。 100人ぐらいの人が、15メートルの池に足を入れていて、真ん中に高座。 すぐそばに間歇泉が掘ってあり、噺を演っていると、お湯がバァーーッと吹き上がる。 昼の部がそれで、夜の部は真っ暗、ライト2本、観光課の人が照らして、虫を除けながら演る。

 東京で商業の中心というと、銀座、新宿、渋谷……、戸越銀座。 昔は、蔵前、大店のご隠居が根岸の里、閑静な文人墨客が住むところを隠居所にした。 根岸、今はラブホテルと、正蔵三平兄弟。 孫店の三軒長屋がついたところに、小僧の貞吉を連れて、侘び住い。

 おーい、貞ヤー。 風流だけど、寂しい。 貞吉が周りを見て来ると、コロリンシャン、裏のお嬢さんは爪をつけて、琴をひっかいている。 風流だなあ。 隣のお爺さんは盆栽、その隣は生け花。 ご隠居は、一日煙草を喫っている。 前の人が茶人だったので、茶室と道具がある。 貞吉は、お菓子が出て美味しいから、茶の湯をやりましょうよ、と。 隠居は、すっかりお流儀を忘れた、子供の時に習ったから。 そんなこと言って、知らないんでしょう。 お前は、言葉に棘がある、おっ母さんの乳を片手に、片手で茶の湯をやった。

 ただ、あの粉を忘れた。 買って来ましょう。 知ってんのか、どこで売ってる? 角の乾物屋。 青黄な粉。 茶道、私(菊之丞)も高校時分、授業でやった、お流儀、お作法が難しい。 ガボンガボンと火を熾す。 茶の湯だか、さざえの壺焼きだか、わからない。 風流だなあ。 象の耳かきで、青黄な粉を入れて、初日だからと、もう一杯入れる。 「ひしゃく」の柄の長いので、お湯を入れる。 かき回すんだ。 これは、何というので? ザサラザサラだ。

 泡が立たんな、何か薬が一つ入るな。 買って来ます。 知ってんのか、どこで売ってる? 角の乾物屋。 椋(むく)の皮。 羽根突きの玉は、このムクロジの実。 買って来ました。 隠居が、椋の皮を袋ごと釜の中に放り込んだから、釜から泡がブクブク。 椋の皮、昔は洗剤の代わりに使った、アリエール、アタック、ブルーダイヤ、金銀パールプレゼントというのも古い時代にはあった。

 蟹が吹いた泡みたいになった。 飲みなさい。 ご隠居から。 お前がお客だ、先に飲め。 茶碗を右手で持って、左手を添える、目の前に上げて、三回まわす。 泡を吹きやる。 泡が戻らない隙を伺って、飲む。 アワアワアワ(不味い顔をして)、風流だなあ。 ムッ、ンンンン…。 いい加減に飲み込め、うがいをするな。 エーーン、エーーン、風流だなあ。 二人で飲んで、三日も経つと、お腹を壊す。 貞ヤー、お前、声に張りがないぞ、わしはハバカリに17回も行った。 私は、いっぺんきりです、入ったっきり、出られなくなりました。

 オシメの替えがない、雨が降ると乾かない。 誰か呼んでやりましょう、蔵前の若旦那はどうです。 あれは、お流儀が違うから駄目だ。 三軒長屋の人はどうです、ご隠居さん、お手紙を三本書いてください。