春風亭朝也の「そば清」 ― 2012/10/20 01:21
だいぶ旧聞になってしまったが、10月2日は9月の分がずれこんで、第531
回の落語研究会だった。 忘却の彼方から、どれだけ再現できるだろうか。
「そば清」 春風亭 朝也
愛川晶翻案「夜鷹の野ざらし」 柳家 小せん
「化け物使い」 古今亭 志ん輔
仲入
「身投げ屋」 五街道 雲助
「錦の舞衣」(下) 柳家 喬太郎
「私の“方”は春風亭朝也」と言う。 若いのだろう。 柳亭市馬と同じ大
分出身、住む家も近いので、稽古をつけてもらいに行く。 「メシ食ってけ」
となる。 カレー、「若いんだから」とテンコ盛り。 途中でカレーを足して、
なんとか食べ終わる。 「おかわりは?」、少な目にとお弟子さんに目で合図
する。 レンジが「チン」と鳴って、タッパーが出て来た。 「食います、そ
の位」と言ったが、さっきより多い。 その後の稽古、何も憶えていない。
そば屋で、「どーも」と十枚たいらげた男を見ていた連中、二十枚食える食え
ないという話になり、二十枚一分の賭けして、酒を飲もうということになる。
話すと男も、引っ越し蕎麦のご挨拶もしていない、負けを承知で引き受けまし
ょう、という。 「はい、どーも」と始めて、たちまち十九枚、あと一枚食べ
られるかな、その日の調子ですから、「はい、どーも」。 昨日より早い。 次
の日は、三十枚二分を、「はい、どーも」と取られる。 ニヤニヤ笑っている人
がいる。 知らないんですか、あの人は「そばの清兵衛さん」、そばの賭けで家
を三軒建てた。 くやしいから、五十枚一両の大勝負をもちかけると、今日は
おナカの具合が悪いから「どーも」と。
清兵衛、信州の山中で、ふたっかかえもあるウワバミが、鉄砲を持った狩人
を、ガブリとひと呑みにし、あたりをバターンバターンと苦しがった末、赤い
草をペロペロとやったら、ふくらんでいたおナカがへこむのを目撃した。 し
めたと、赤い草を刈り取って山里へ下りた。 昔、アルミの弁当箱が、梅干の
酸で黒くなった。 梅干は金属を溶かすけれど、ご飯は溶かさない。 これを
憶えておいて頂いて、後半を。
五十枚一両の賭け、ツーーッと一本につながっているように、四十まで進ん
だ。 ヒィ、フゥ、ミ、ヨ、イツ、ム、ナナ、脂汗が出てきた。 あと一枚。
やめときな、死んじゃうよ。 やります、やります。 下向けない、ドンドン
やっても、茶筒じゃないんだから入っていかないよ。 縁側で休みたい、あと
を閉めてほしい。 赤い草さえあれば、チュパチュパ。 静かになったぞ。 清
兵衛さん! いなくなっちゃった、蕎麦が羽織を着て座っている。
朝也には気の毒だが、「どーも」というところで、先代の金原亭馬生(志ん
生の長男ね)の「どーも」の可笑しさを思い出してしまった。
回の落語研究会だった。 忘却の彼方から、どれだけ再現できるだろうか。
「そば清」 春風亭 朝也
愛川晶翻案「夜鷹の野ざらし」 柳家 小せん
「化け物使い」 古今亭 志ん輔
仲入
「身投げ屋」 五街道 雲助
「錦の舞衣」(下) 柳家 喬太郎
「私の“方”は春風亭朝也」と言う。 若いのだろう。 柳亭市馬と同じ大
分出身、住む家も近いので、稽古をつけてもらいに行く。 「メシ食ってけ」
となる。 カレー、「若いんだから」とテンコ盛り。 途中でカレーを足して、
なんとか食べ終わる。 「おかわりは?」、少な目にとお弟子さんに目で合図
する。 レンジが「チン」と鳴って、タッパーが出て来た。 「食います、そ
の位」と言ったが、さっきより多い。 その後の稽古、何も憶えていない。
そば屋で、「どーも」と十枚たいらげた男を見ていた連中、二十枚食える食え
ないという話になり、二十枚一分の賭けして、酒を飲もうということになる。
話すと男も、引っ越し蕎麦のご挨拶もしていない、負けを承知で引き受けまし
ょう、という。 「はい、どーも」と始めて、たちまち十九枚、あと一枚食べ
られるかな、その日の調子ですから、「はい、どーも」。 昨日より早い。 次
の日は、三十枚二分を、「はい、どーも」と取られる。 ニヤニヤ笑っている人
がいる。 知らないんですか、あの人は「そばの清兵衛さん」、そばの賭けで家
を三軒建てた。 くやしいから、五十枚一両の大勝負をもちかけると、今日は
おナカの具合が悪いから「どーも」と。
清兵衛、信州の山中で、ふたっかかえもあるウワバミが、鉄砲を持った狩人
を、ガブリとひと呑みにし、あたりをバターンバターンと苦しがった末、赤い
草をペロペロとやったら、ふくらんでいたおナカがへこむのを目撃した。 し
めたと、赤い草を刈り取って山里へ下りた。 昔、アルミの弁当箱が、梅干の
酸で黒くなった。 梅干は金属を溶かすけれど、ご飯は溶かさない。 これを
憶えておいて頂いて、後半を。
五十枚一両の賭け、ツーーッと一本につながっているように、四十まで進ん
だ。 ヒィ、フゥ、ミ、ヨ、イツ、ム、ナナ、脂汗が出てきた。 あと一枚。
やめときな、死んじゃうよ。 やります、やります。 下向けない、ドンドン
やっても、茶筒じゃないんだから入っていかないよ。 縁側で休みたい、あと
を閉めてほしい。 赤い草さえあれば、チュパチュパ。 静かになったぞ。 清
兵衛さん! いなくなっちゃった、蕎麦が羽織を着て座っている。
朝也には気の毒だが、「どーも」というところで、先代の金原亭馬生(志ん
生の長男ね)の「どーも」の可笑しさを思い出してしまった。
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