まだまだ希望はある2006/08/02 07:43

 便利屋『まほろ駅前多田便利軒』は、その営業を通じて、現代日本の抱える 諸問題に直面する。 タッチは軽いが、扱っている問題は、けっこう重いのだ。  親子関係、子供の教育、借金取りみたいな人にうろうろされての突然の夜逃げ、 男女の別れ話のもつれ、果ては女子高校生の親殺しまで。 そして、なんで便 利屋なんかやったり、その居候になったりするのか分からない、多田啓介と行 天春彦の二人自体も、過去に深刻な事情を抱えていた。 東京西南のこの町に 住む、いろいろ問題はありながら、内実はやさしい人同士がつながって、他者 それぞれにいろいろな生き方のあることを認めながら、生きていくところに、 希望を見出そうとする。

 「だれかに必要とされるってことは、だれかの希望になるってことだ」(100 頁)

 「だけど、まだだれかを愛するチャンスはある。与えられなかったものを、 今度はちゃんと望んだ形で、おまえは新しくだれかに与えることができるんだ。 そのチャンスは残されている。」(158頁)

 「今度こそ多田は、はっきりと言うことができる。/幸福は再生する、と。 /形を変え、さまざまな姿で、それを求めるひとたちのところへ何度でも、そ っと訪れてくるのだ。」(334頁)