反日を越えて、重要な中国の安定 ― 2006/08/12 07:14
04年夏のサッカー・アジアカップの騒動、そして05年4月の北京や上海で の反日デモと暴動は、記憶に新しい。 杉本信行さんは、中国政府が不満のガ ス抜きの機会として反日暴動を黙認する面があると指摘するとともに、公安当 局が数万人にのぼる警官と関係者を動員しながらコントロールできなかったこ とから判断して、相当組織化された動きであった可能性も排除できない、とす る。 北京での反日デモでは、三つのグループが合流して過激化している。 第 一グループはいわゆる官製デモ隊で、秩序立った抗議デモで終わるはずだった。 そこに解放軍が主導する第二グループが加わり、政府の意図を狂わせた。 さ らにそこへ日頃から社会格差に苛立つ一般人が第三グループとなって合流し、 手がつけられなくなったと、杉本さんは考えている。 ふた月前の2月、台湾 海峡の安全は日米の共通戦略目標であるという「2プラス2」の合意が発表さ れていた。 この事態は、胡錦濤政権が軍を掌握できていない証左なのではな いか、という。 「対日批判を口実とした何らかの組織的な反政府運動が中国 全体に広がりつつあるかもしれない」(233頁) そして、そうした反日運動が、 一般大衆を巻き込んだ形で発展した場合には、そのエネルギーが直接党あるい は政府批判に向わないように、中国指導部が強硬な対日政策を取る危険性がき わめて高まっていると指摘せざるを得ない、ともいう。
それでもなお、中国の安定は、隣国のわが国の安全保障にとって不可避的に 重要なのだから、環境保全もふくめて、それらの確保のために、日本は汗を流 さざるを得ないと、杉本さんはいうのだ。 大規模プロジェクトではなく、「草 の根無償資金協力」を中国全土に展開するなど、「わが国のための対中援助」を 再構築していく必要性がある、「情けは人のためならず」という。
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