さん喬の「掛取萬歳」 ― 2008/12/31 08:05
さん喬は、オリーブ・グリーンというか、鴬色の着物で出てきて、大晦日の 話をする。 一日で人生を変えるのは、日本人のずうずうしさだと言う。 昔 の大晦日の商家の忙しさはよく知っている、手前の実家は乾物屋だから、と。
去年は大晦日に死んだ振りをして、棺桶の中に入っていた八五郎、今年は借 金取の好きなもので、言いくるめる作戦に出る。 まず、大家。 去年は、女 房のお光に香典を渡そうとするのを、受け取れないと押し問答になり、八五郎 が棺桶から手を出したので、驚いて裸足で逃げ帰った。 八五郎はその下駄を 履いて、年始に行った。 大家の好きなものは狂歌。 八五郎は、つまらねえ ことに凝って店賃どころじゃあない、狂歌を考え出すと夜も日も明けないと、 「何もかもありたけ質におきいでてかからぬしまのふとんだになし」「貧乏の棒 もしだいに長くなり振り回される年の暮かな」などとやって、大家を喜ばせ、 四つたまった店賃を待ってもらう。
以下、浪花屋(薪屋?)には義太夫、魚屋の勝っつあんは喧嘩、相模屋(酒 屋)の番頭にはお芝居、三河屋(米屋)の旦那には萬歳で、言い訳をする。 喧 嘩はたしか「にらみ返し」「言訳座頭」にもあった、梃子でも動かない、動いて 見ろ、と脅し、払わないで、受け取りまで置いていかせるヤツ、勝っつあんな るものガキの頃からのダチだというから始末に悪い。 なぜ八っつあんにこれ だけの才覚があるのか、疑問だというところから、言い訳を専門職に依頼する 「にらみ返し」「言訳座頭」が出てきたのだろうか。 ともかく義太夫、歌舞伎 の台詞回し、三河萬歳などの諸芸の稽古も十分なのだろう、さん喬は愉快に聴 かせて、目出度く平成二十年の年越しとなったのであった。
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