リズムと香り、水を固める、口中調味2013/05/21 06:50

 山本道子さんの講演の続き。 <三つ食へば葉三片や桜餅>、虚子は桜餅が 好きだった。 桜餅には、東京風と関西風がある。 関西は道明寺だ。 向島 の長命寺桜餅は山本新六が享保2(1717)年に創業したという。 皮はクレー プのように焼いてある(卵は入っていないが)。 高温で焼くから“リズムがあ る”。 ジワジワ焼いたら駄目で、グジュグジュになって、柏餅の親戚みたいに なる。 安いのは、焼いていない。 もっとも、桜餅は値段が取れない。 桜 餅は素晴らしい、香りを楽しむ、優れた江戸のお菓子だ。 イチゴ大福が出た 時、ゲテモノだと思った。 だが、従来のお菓子には酸味がなかったので、香 りもあり、一つの工夫の転換点になった。 三代目の祖父は、ケーキの箱に銀 紙を貼った。 乾燥を防ぐためだ。 長命寺桜餅で洒落た篭に入っているもの は、半日ぐらいで乾きやすい。 虚子のほかの桜餅の句は、みな土産だ。

 <先づ食うて先づ去る僧や心太(ところてん)>。 “水を固める”のは、 日本的だ。 天草の天然の香りを楽しむのは、日本人の繊細な食文化である。  アメリカ人の友人には、味がついていないものは難しい、「ノー・フレーバー」 という。 蜜や酢・醤油が、抱きつきすぎないで、味が添ってくる。 日本人 の「涼」の味わい方だ。 筑波大学の先生が、“口中(こうちゅう)調味”とい うことを言い出した。 最近は「食育」の分野で言われ、同じものばかり食べ ないで、おかず一口、ご飯一口と食べる。 日本人は、カツ丼の上と下を、ち ょうどよく塩梅して食べることが出来るが、外人は出来ない。 ベタにならな い濃やかさ、隙間のある食べ方が、私たちの感性に影響を与えている。 それ が俳句の切れ字につながるとまでは、言わないけれど(笑)。 寿司を握る器械 で、ご飯の中の空気の量を微妙に調整するロボットまで開発されている。 お 刺身の食べ方などでも、メリハリの付け方が、個人個人で違う。 食べ方の上 手な人は、美味しいものを食べている可能性がある。 小さい子には、「ふりか け」を使うなといわれている。