柳家さん喬の「うどん屋」後半2017/11/07 07:06

 うどん屋はいいな、火をかついで世間を広く歩けて。 お前は仕立屋の多平 を知っているか? 娘はお美代坊、十八、お婿さんをもらって、今晩婚礼に呼 ばれたんでしょう。 お前、あの近所か? おじさん、さて、このたびは、っ て言ったんでしょう。 お前、見てたのか。 そうなんだよ、うどん屋、お前、 如才ねえな。 お前ンちなんか、くっ付き合いだろ。 人の口には、戸は立て られねえ。 くやしければ、噂を立ててみろ。

 どっかへ行こう、うどん屋。 水をくれ。 お冷ですか。 酔い覚めの水、 千両と値が決まりってね、いくらだ? 只。 もう一杯ちょうだい。 火に当 って、かじかんでいた手がピンシャンするようになった、かみさんによろしく、 あばよ。 うどん、差し上げましょうか。 俺、うどん嫌いなんだ。

 何だ、あの客は…。 「なーべやきうどーーーん!」 子供が寝たばかりだ から、静かにして! (小声で)「うどん屋さん」。 あ、奉公人が二十人も、 三十人いる大店だ。 二十人、三十人…。 へい、只今。 熱くして。 おい くつ? 一つ。 この人は試しなんだ、店仕舞いになる。 どうぞ。 フーフ ー、ヅルヅル(手で口をぬぐう)、フーフー、ヅルヅル、クチャクチャ(汁も飲 む)。 (小声で)ごちそうさま。 (小声で)「うどん屋さん、お前も風邪引 いているの?」

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