「大相撲から見る日本経済」2005/07/05 09:04

6月24日の日記に書いた中島隆信さんの『大相撲の経済学』(東洋経済新報 社)を読み終わったので、さわりの「大相撲から見る日本経済」について書いて おきたい。 中島さんは、バブル経済とその後の反動という観点でも、日本経 済と相撲は重なり合う部分がある、という。 1980年代の終りから90年代に かけての日本経済は、資産価格の高騰による土地投機、消費の拡大、そして金 融機関を含む企業生産の量的拡大をともなうものだった。 しかし、それは高 度成長期にみられたような生産性の向上をともなうものでなく、1990年代初め のバブル崩壊後、深刻な不況となって跳ね返ってきた。 大相撲のバブルは、 平成になって若貴兄弟の入幕によって始まり、平成5(1993)年には二人のあい つぐ大関昇進により「若貴フィーバー」となって相撲人気は爆発した。 平成 4年春場所の新弟子検査では史上最多の151名が合格、在籍力士数も900人を 超える。 若乃花は平成12(2000)年、貴乃花は平成15(2003)年に引退し、ブ ームは過ぎ去った。 衰退に瀕した日本相撲協会は、平成8(1996)年10月境川 理事長(元佐田の山)のもと、年寄制度の改革(一般社会でいう高齢化にともなう 年金制度の破綻の問題)を目玉に構造改革に乗り出したが、失敗に終った。 バブル期に大幅に採用を増やした企業は、その後の景気低迷により過剰人員 を抱えることになってしまった。 大相撲でも、三段目力士の滞留が年々顕著 (とりわけ25歳以上が60人(約1/3)以上)になってきている。

日本はこれまで島国としての地理的な利点を生かす形で自己完結的なシステ ムを構築し、戦後の経済的繁栄を築いてきた。 しかしグローバル化が進み、 従来のシステムで蓄積されてきた人的資本(会社の中だけで通用する)では地球 規模の競争に太刀打ちできず、オープンで透明性の高いルールの下での新しい システムへの変更を迫られている。 大相撲が企業と違うところは、オープン で競争性の高いスポーツ的側面と、閉鎖的で差別化しやすい(歌舞伎のように) 文化的側面の二面を持っていることだ。 それゆえ中島さんは、あえて競争と いう危ない橋をわたらなくても、長年培ってきた歴史的遺産の価値を最大限に 生かし、文化的側面から国民の支持を得ていくことができるのではないか、と 考えるのだ。

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