松たか子の『夢売るふたり』<等々力短信 第1039号 2012.9.25.>2012/09/25 00:08

 松たか子ファンである。 映画『夢売るふたり』を観た。 西川美和監督作 品、R15+指定(restricted、15歳未満に適さない映画に映倫が指定)、冒頭か ら車谷長吉さんのいわゆる「まぐわい」シーンでびっくりする。 一緒に観た 家内が「いやな映画を観てしまった」と嘆くから、R某歳+(女性)映画かも しれない。 夫役の阿部サダヲの他、田中麗奈、鈴木砂羽、木村多江、伊勢谷 友介、香川照之、笑福亭鶴瓶などの出演。

 西川美和監督の映画は以前『ディア・ドクター』を観て、それなりに感心し た。 山間の小村の診療所、笑福亭鶴瓶は偽医者なのだが、「気胸」(最近、99 矢部何某が罹った)を知らなかったのを余貴美子のベテラン看護婦に助けられ たりして、地域で信頼を獲得し、根付いてゆく。 嘘から出たまこと。 瑛太 の研修医も、地域医療のコツを彼に学ぼうとしている。 頑なな八千草薫が鶴 瓶医師の親切に心を開いて、家族に病状の嘘をついて欲しいと頼んだことから、 事態は動き出す。 八千草の娘、井川遥は東京で大病院の医者をしていた。 偽 医者は、突然いなくなる。 偽医者、けっこういるものなのだ、被災地のボラ ンティアにも、最近は板橋区の検診医にもいた。

 脱線した。 『夢売るふたり』は、苦節5年の末に持ち、順調に5周年を迎 えた小料理屋を火事で失った若い夫婦。 阿部サダヲは茫然自失の再起不能状 態だが、松たか子は強い。 偶然、夫が女に「もてる」ことを知って、再出発 資金積み立てのため、結婚詐欺をつぎつぎに計画、実行していく。 結婚でき ない諸事情、孤独や悲哀を抱えた女達が、いとも簡単に騙されていく。 夫は 騙しながらも、それらの女達に心を寄せ始める。 金の面では、もう一歩で東 京スカイツリーを望む理想の店を手にするところまで来た妻だが、心は千千に 乱れることになる。 一口に言えば、暗い映画だった。

 松たか子は、小料理屋で接客しているところなど、すーーっとして、実に美 しい。 他方、こんな顔もするのかと思う、憎しみの籠った表情も見せる。 西 川美和監督は、映画『告白』を観て、松たか子が悪役に似合うと知り、夫婦の モラルを含めた汚い話に松たか子の品が必要だと、出演依頼をしたそうだ。 広 告文にあるように西川監督が「ラブストーリー」を描こうとしたのなら、決定 的な失敗があった。 「ヒロイン」が可哀想でないことだ。 圧倒的に強いの だ。 実は最近、NHK BSの『薄桜記』にはまっているのだが、柴本幸(ゆき) のヒロインは明らかに「可哀想」なのである。

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