「末枯(うらがれ)」と「檸檬」の句会2022/10/17 07:03

 13日は『夏潮』渋谷句会だった。 雨の予報だったが、行き帰りを降られずにすんだ。 兼題は、「末枯(うらがれ)」と「檸檬」、私は次の七句を出した。

  末枯の歩道段差に転びけり
  末枯や何かと傘寿鼻にかけ
  終バスを逃しとぼとぼ末枯野
  徒然に檸檬転がす掌(たなごころ)
  イシグロの原書を求めレモン買ふ
  秋の陽にレモン絞りのガラス照り
  生しらす叩き胡瓜のレモン和へ

 私が選句したのは、次の七句。
  末枯や庭づたひなる母の家     英
  末枯の中の墓石に日の温み    照男
  末枯や見送る義姉は同じ歳    真智子
  末枯の余呉のますます神寂びて  祐之
  瀬戸内の海穏やかに檸檬畑    淳子
  檸檬の木棘多過ぎて手を出せず  明雀
  檸檬食むトライアスロン持久戦   照男

 私の結果。 <末枯や何かと傘寿鼻にかけ>を英主宰、<終バスを逃しとぼとぼ末枯野>を照男さんと真智子さん、<徒然に檸檬転がす掌>を英主宰と明雀さん、<イシグロの原書を求めレモン買ふ>を美保さんと作子さん、<生しらす叩き胡瓜のレモン和へ>を明雀さんと正紀さんが採ってくれて、主宰選2句、互選7票、合計9票と、先月に続き、稀なる成績だった。

 主宰の総評。 「末枯」と「檸檬」、難しい題だった。 「末枯」は草、「末」は端で、先の方から枯れる。 句会にも、良い句会とそうでない句会があって、この渋谷句会は十分に力が試せる句会で、良い句に人気がある。 俳句は、作者のために好意的に見るものだ。

 私の句の選評。 <末枯や何かと傘寿鼻にかけ>…(この句、披講で笑いが出た。作者は自嘲のつもりだったが…。)どうしたものか、傘寿は八十歳、傘は唐傘。他山の石。年を取って、若い人に遠慮する、海からの細い道で手をつないだカップルに出会ったりすると、つい道を譲ったりする、さらに、もう一つ長い内緒の経験談を聴けた(のは、この句の手柄か)。 <徒然に檸檬転がす掌>…うまい句。掌で弄ぶ、アンニュイな感じ。とらえどころのない、ある種の不安感も。レモンの形を詠む。