文化財の保存と木曜島の話2008/06/27 07:08

 「菜の花忌シンポジウム」のつづき。  諸田玲子さん…歴史小説を書いているが、史実を紙で調べ、現地に行く。 人 情と自然と、その土地から浸み出してくる歴史がある。 現地を歩かないと、 空気感がつかめない。 それを司馬さんに教えて頂いた。 『街道をゆく』に は、変わってしまうことへの怒りがある。 奈良散歩に出てくる修二会のよう に、千年も続いているものがあっていい。 そうした重しがなくなって、人々 が不安になる。 何が継承されたか、何が失われていったか、検証されていい のではないか。 文化財が破壊される事件がある。 司馬さんは「町おこし」 に、キツイことを言っている。 文化財は国家の力でないと守れない(個人で は出来ない)、それを残すためにお金を使ってもらいたい。 ちゃんと郷里があ る、残っている、ことが大事。

 井上ひさしさん…井上さんは、1976年にオーストラリアにいた。 「ジ・オ ーストラリアン」という新聞に、日本の偉大な作家が来るという記事が出た。  司馬さんはシソンズ(?)教授という世界的な貝の権威に会いに来た。 オー ストラリアの北、トレス海峡に木曜島という島がある。 そこで分厚い貝が取 れて、昔はヨーロッパのご婦人のボタンになった。 しかし、潮流が早いとこ ろで、潜るのは日本人だけだ。 それが「木曜島の夜会」という作品になった。  成功への強い衝動が、日本人にはある。 19歳ぐらいで熊野などの貧しいとこ ろから来て、県知事ぐらいの収入がある。 水潜りと貝探しの唯一の適格者が 日本人だというのは、死亡率10%、一シーズン30人で3回事故がある。 日 本人は仕送りと研究に熱心。 日本人を突き動かしていたそうしたエネルギー がなくなっている、薄れているのではないか、と司馬さんはいう。