坂本龍馬とキリスト教、その二2010/08/21 06:56

 もう一人は、坂本直(なお)(1842~1898)。 私はこの人のことを、磯田道 史さんの朝日新聞連載の「この人、その言葉」(4月17日)で知った。 龍馬 の甥、龍馬の姉千鶴の子である。 はじめ高松太郎といい、7歳年上の龍馬に 連れられ、勝海舟の塾で海軍術を学び、亀山社中・海援隊で活躍した(『龍馬伝』 では川岡大次郎が演じている)。 龍馬暗殺後、新政府で龍馬の遺志でもあった 北海道行政にあたったが、役所の現実にあわず免職。 それでも朝廷は龍馬の 子孫断絶を惜しみ、直を龍馬の養子にし、のちには宮内庁の舎人として明治天 皇のそばで働かせた。 しかし「耶蘇(キリスト)教信奉」で、またも免職。  海援隊の仲間たちは男爵などに出世し、坂本家にも爵位の内示があったと言わ れるが、直は爵位を受けなかった。

 その坂本直は、驚くべきことに「龍馬を斬った男」今井信郎(のぶお)に会 おうとして、明治11・12年頃、父親の法要に招いた。 殺される覚悟で出か けた今井信郎を、坂本直は非常に歓待し、「過去のことは忘れてこれから新しい 日本の為にともにやりませう、私はあなたにお目にかゝれてほんとうにうれし い」と、語ったと伝えられている。 坂本直がキリスト教で免職になった頃、 今井信郎も愛児の死をきっかけになぜかキリスト教に入信している。 磯田道 史さんは、最後にこう書く「恩讐をこえ2人は手を握り合っていたと私は信じ たい」