山本容子さんの絵本『おこちゃん』2010/08/29 07:08

 今年2010年は「国民読書年」だそうである。 ずっと「等々力短信」を続 けているものだから、いつも「沢山、本を読むのでしょう」と訊かれるが、恥 ずかしながら、そう多くはない。 読もうと思って、買うには買ったが、積ん 読になっている本もたくさんある。 それがこの所「暑さの夏は、読書をしよ う」と、いろいろと読み飛ばしている。

 机の上には、4月25日の<等々力短信 第1010号>「本好きの福音」に書 いた『人生に大切なことはすべて絵本から教わった』(現代企画室)で、末盛千 枝子さんが薦めていた本が二冊乗っている。 図書館で借りて来た。 その一 冊の題名は、いみじくも『読むことは旅をすること』(長田弘著、平凡社、副題 は「私の20世紀読書紀行」)である。 もう一冊は、銅版画家・山本容子さん の絵本『おこちゃん』(小学館)だ。

 いいおっさんが、図書館のカウンターで絵本のことを訊くのは、恥しい。 有 難いことに、世田谷区の図書館は、インターネットで本の予約が出来、用意が 出来るとメールで知らせてくれる。 『おこちゃん』も、『読むことは旅をする こと』に他の一冊を抱き合わせて、平然と借りて来ることが出来た。

 画家でも、音楽家でも、作家でも、美人は得だと思う。 それだけで、一歩 先を行くことが出来る。 アドバンテージである。 銅版画のことはわからな いが、山本容子さんご自身の持つ雰囲気はわかる。 『おこちゃん』は「よお こちゃん」、つまりご自分の幼時を描いている。 まど みちお作詞、團伊玖磨 作曲「ぞうさん」の下品な替え歌を、團さんが唾棄していたのを聞いたことが あったが、『おこちゃん』は「ぞうさん」の替え歌である。 山本容子さんのこ れなら、團さんも許すのだろう。

 すこぶる元気のよい「おこちゃん」は、タイツに赤いふんどしで若乃花や力 道山になり、下駄にクギを打ってガッタンガッタンとハイヒールにし、草を食 べるキリンを緑色に、青い海をピンク色で描いて、じいちゃん、ばあちゃん、 とうさん、かあさんたちを、「びっくり ひっくり」かえしてしまうのだ。 山 本容子さん、幼少の頃から一歩抜け出した逸物、「栴檀は双葉より芳し」であっ たことが、よくわかった。