<時ものを解決するや春を待つ 虚子><等々力短信 第1104号 2018.2.25.>2018/02/25 07:26

 本井英主宰の俳句雑誌『夏潮』は昨夏、2007年8月の創刊から十周年を迎え、 8月26日、来賓、会員、同伴家族など180名余が参加して東京湾記念クルー ズで祝ったのであった。 人生、何が起こるか、わからない。 『夏潮』1月 号巻末の「消息」で、本井英主宰は、「ところで一つご報告があります。実は小 生このたび「咽頭癌」との診断を受け、暫く入院加療の必要が生じてしまいま した。幸い現在のところ転移は見られず、化学療法・放射線療法などにより根 治を目指しております」と告知された。

 私は12月14日の渋谷句会に主宰が欠席され、後選(あとせん)になるとい うことで、事態を承知した。 『夏潮』ホームページの主宰ブログ「汐まねき」 には、病室からの絵画館の屋根の写真で、「私の髪形とそっくり」とか、一時退 院時には三浦半島先端辺りを一人吟行したり、<時ものを解決するや春を待つ  虚子>を引かれたりしている。 たびたび誌友の健吟を求めておられる、「それ が私の生き甲斐ですから」と。

 ご入院中、喜ばしいニュースが届いた。 1月28日、本井英主宰が昨年5 月に刊行の『虚子散文の世界へ』(ウェップ)で、俳人協会の第32回評論賞を 受賞されたのだ。 高浜虚子は、偉大なる俳人として認識されているが、自分 では「俳句」と「文章」(小説家)の両方を「綯(あざな)へる縄の如し」とし て対置している。 しかし毎日新聞社版『定本高濱虚子全集』でも、虚子の「散 文世界」全体に目を配った編輯とは言いがたく、いくつもの珠玉の作品を落し てしまっているという。 「散文世界」をもう一度点検し、評価することで、 虚子の全体像に迫り、そこで明らかになったことが、再び虚子の俳句作品の価 値をも照らし出してくれるものと確信して、執筆された一冊だ。

 2月12日には、朝日新聞朝刊「俳壇歌壇」のコラム「うたをよむ」に、本 井英主宰の「旧正月のこと」が掲載された。 古来、年中行事は旧暦で営まれ てきたわけで、桃の節句には桃が咲き、菊の節句には菊が咲く。 7月7日の 七夕は旧暦なればこそ、すっかり梅雨も明けた晴天の夜空に二つの星が輝くの であった。

旧正月から三日目の2月18日の日曜日、『夏潮』新年会がアルカディア市ヶ 谷で開かれた。 本井英主宰のご出席が心配だったが、宗匠のような(宗匠な のだが)お姿で、3時間近い83人出句の句会も、その後の宴会も、お元気に通 された。 ベッドで養生していると、いろいろ考える。 『夏潮』連載を『評 伝 高濱虚子』に、【虚子『五百句』評釈】や、別冊『虚子研究号』の「「戦地よ り其他」を読む」もまとめたい。 『夏潮 雑詠選集』を編んで、今日の暗澹と した俳句状況を変え、花鳥諷詠論の写生句で「俳句の進むべき道」を示したい。  それには投句者の本気度が問われる、と。

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