俳句「口も手も」狭き庭父が先頭四方拝2018/01/01 07:21

 明けましておめでとうございます。 平成30年の元旦です。 毎年元日に ご覧に入れている自作の俳句、俳誌『夏潮』一月号の親潮賞応募作、題して「口 も手も」です。 昨秋、父の二十三回忌を修しましたが、いろいろと父のこと を思い出してつくったものです。

狭き庭父が先頭四方拝

書初や遠く及ばず父の手に

五十で隠棲狩猟三昧の夢

品の良き源平の斑や肥後椿

花筏大川端の商業出

江戸川や和船を漕いで投網打ち

鳥海を望む青田に画架を立て

巻藁前壮年の父汗かきて

口も手も泉こんこん芝育ち

烏賊のごと斜交ひに行く古泳法

夏休みの工作に過ぎ父の腕

湯上りの父ぱたぱたと天瓜粉

銀ブラの街頭写真白い靴

からからに乾して朝顔水をやれ

お仲間と画廊に並べ敬老日

鯊釣や大いなる物飛ぶ下で

道元の暗誦自慢秋彼岸

ツイードのジャケットで行く三の酉

悴んで秩父夜祭山車を描く

明けぬ夜はないと父言ふ年の果

 この二十句以外にも、つくっていたので、おまけ。

竹馬や言ふ「痛いのは自分持ち」

度毎に筆とパレット洗ひをり

父帰り土産の螢蚊帳の中

硝子熔かす家業を畳み子の昼寝

古今亭駒次の「鉄道戦国絵巻」2018/01/02 07:40

 12月26日は、第594回の落語研究会だった。 年末らしい噺もあって、一 年を笑い納めたのであった。

「鉄道戦国絵巻」     古今亭 駒次

清水一朗作「三下り半」  三笑亭 夢丸

「菜刀息子」 小南治改メ 桂 小南

        仲入

「尻餅」         春風亭 一之輔

「御慶」         柳亭 市馬

 古今亭駒次は、来年9月真打に昇進すると言って、拍手をもらい、いろいろ 忙しいという。 先輩が言った、「落語なんてやってる場合じゃない」。 名前 をどうするか。 師匠が志ん駒だから、「志ん駒次」はどうだ、いっそ「志ん駒」 になれとか。 まだ生きている、6、7年体調不良で寄席に出ていないけれど。  おかみさんが着物をもらってくれというんで、先輩方にもらってもらった。 あ る日、皆それを着てくれたのだけれど、一人が勘違いして「惜しい人を亡くし ました」。 まだ生きている。

 東急電鉄の話。 社長、大変です! 東横線がJRに寝返って、東急を脱退 しました。 田園調布、自由が丘、代官山、いい所はみんな東横線だ、残され たのは、五反田、蒲田、大井町、戸越銀座。 2004年に高島町と桜木町を、み なとみらい線に手放した恨みだな。 東急7人衆、集まれ! 池上線、大井町 線、田園都市線、世田谷線、目黒線、多摩川線。 ハイ、ハイ、ハイ! 一人 忘れているぞ、こどもの国線、三駅しかないけれど。 全面戦争だ、憎っくき 東横線め!

 池上線は、今時、三両編成かと馬鹿にされている。 田園都市線は田舎の都 市を走るのか、俺の渋谷を入れるな、かつては新玉川線という偽名を使って、 と。 助太刀を頼もう、東武線、京成線、西武池袋線、西武新宿線に。 大変 です、東武東上線と西武池袋線が副都心線と密通して、東横線につながりまし た。 西武新宿線にがんばってもらって、所沢からの侵入を防げ。 京成線に は浅草へ行って、東武に頼んでもらいたい。 南北線につながっている目黒線 は、南北統一を果たし、生き別れになっている多摩川線は、目蒲線に戻すんだ。

 二代目東横線になれ! 大井町線が逃げ出したぞ、大井町の電車基地から、 新幹線を襲撃させようとしていたのに。 精神的な揺さぶりをかけるんだ、池 上線の御嶽山駅は新幹線の上を通っている。 三両編成だけれど、上から攻撃 して、相手が動揺したところを、一網打尽にするんだ。

 東急殿! 東武伊勢崎線がJR新宿駅発に乗り入れをしました。 南北線へ の乗り入れ廃止は、田園調布の住民が反対しています。 西武新宿線が討死を しました、西武池袋線のレッドアロー号に射られて。

 池上線が頼りだな。 矢文が来ました。 「池上線は預かった 新幹線ひか りの君より」 池上線が捕まった。 (牢屋の中から)ボクはここです。 マ ロはひかりじゃ、のぞみとは何事じゃ、アハハハハ。 京成のスカイライナー を寄越しても、やっと成田エクスプレスに勝っているだけではないか。 じゃ あフランスの超特急TGVを呼ぼう。 なんだ小田急のロマンスカーではない か。 こちらにはマロよりも速い味方がいる。 余はリニア大王だ。 時速603 キロ。 数字が半端だな。 しかしリニアは磁石の塊だから、レールにくっつ いて動けなくなった。

 と、いうわけで、平成29年12月29日、リニアが池上線を走った。 五反 田―蒲田間の所要時間、2秒。

三笑亭夢丸の清水一朗作「三下り半」2018/01/03 08:26

 坊主頭の夢丸、この噺は39年前に桂文朝がこの会(1978(昭和53)年8月 の第124回)で演った、アンケートと言って、聴いた人は? と手を挙げさせ て、誰もいないのに安心していた。 私は聴いたのだろうが、すっかり忘れて いた。 夢丸は千代田線で来たという、タウンショップ、町屋の火葬場の裏の 長屋から。

 昔の長屋には、井戸、惣後架、掃溜。 井戸端で女が倒れる。 家主が通り かかって、しっかりしなよ、お内儀。 空腹を覚えたって、何時から、一昨日 の朝から。 糊屋の婆さん、大きなお握りを5、6個、つくってあげな。 頂 けません、痩せても枯れても武士の妻。 何、言ってんだよ、子供たちも呼び な。 夫が長の浪々の身で、お家主様にお礼を申し上げます。 ご亭主には、 前にも意見したんだよ。 半公が手紙を書いてもらいたいという、吉原の女に ね、いくら出すと聞くと、金に糸目はつけない、1文でも2文でもっていうか ら、1分出しなって言ってな。 お長屋の侍の先生に頼もう、女の名は? 茨 木屋のお綱。 腕をもぎ取りそうだな。

 どーーれ。 なかなか開かない戸だな。 建付けの苦情は家主へ言え。 あ いやお家主か、よく見苦しきあばら家へ。 うちの長屋だよ、店賃が18溜っ ている。 手元不如意で、暫時ご猶予を。 親子4人、大変だというんで、前 にも仕事を世話したことがあった。 手習いの先生をやってもらおうと思って な、些少の月謝でも塵も積もればというから。 ひと月で、誰もいなくなった、 行儀が悪い、馬鹿者! と怒鳴るからだ。 時世時節だ、諦めておる。 そんな ことを言っているから、お内儀もお子達も腹を空かせているんだ、手紙の代筆 を頼みたい。 無礼な、大村源左衛門、痩せても枯れても、武士である。 刀 を抜いたな、どうせ竹光だろ。 帰れ、立ち去れ。 只今は主人が、無礼なこ とを申しまして。 帰りますよ。 あなた、大声を発しませぬように、子供た ちのために引き受けて下さいませんか。

 御免下さい、隣町の大工だが、書いてもらいてえ、離縁状を、困っているん だ、嫁に来た時は猫を被っていやがって、今は昼までグーグー寝ていやがる。  出てけって言ったら、出てってやるから離縁状を書いてくれってんだよ。 書 き賃は、はずみます。 あなた、子供たちのためです。 これきりだぞ。 硯 と半紙を。 「一、今般双方勝手合を以て離縁したる上は、其の方儀、何方(い ずかた)に縁組致し候とも、私方に二心無く、これにより離別一札くだんの如 し。」 おぬし、名は何という? トメす。 トメ? 下に何か付かぬか。 え ーと、あいつが嫁に来た時、三角に手をついて、恥ずかしいって、何とか言っ たっけ、トメゴロウ様。 留五郎か。 相手は? お光。 些少ですが、書き 賃です。

 すみません、ごめん下さい、三下り半を書いて下さい。 名は? 松蔵。 相 手は? お勝。 三下り半屋はここか。 二本書いてもらいない。 二本? 一 本は、カカアに、一本は、今度来る嫁に。 名前は? 伊之吉、萩。 きりが ないな、静、どうなっておる? 隣町まで、行列になってます。 字が書けな い奴が、こんなにいるんだ。 私は何時頃になりましょうか? 明後日の白々 明けに。

 ごめんよ、いるかい。 これは、これは、お家主様。 ずいぶん立派なお屋 敷だな。 私はちっとも嬉しくございません、三下り半業が当りまして…、お 長屋が懐かしい。 ずいぶんやつれたようだな。 嘆きは、主人の変わりよう で、すっかり商売人のようになりまして。

 源の字、番号札を配りなさい。 今日は体調が優れず、50番までだ。 次の 方。 上中下のどれにするか? 上は、鳥の子、最上の和紙に書く。 中は、 美濃紙、一分だ。 下は、鼻紙。 中は、もう文句が書いてある、名前を入れ るだけだ。 中で、お願いします。 私も、中。 私は、上でお願いします。  有難う存じます。 座布団に、お茶、羊羹もお出しして。 一両戴きます。 お 名前は? 長野屋春兵衛。 相手は? およし。 よくない名じゃ。 これは 勘定のほかで、酒肴の足しに。 次は? 中。 次は? 中。

 名前は? 大村源左衛門。 お前は、静。 私にお下げ渡しを。  何でだ? 今のあなたは、夫に持ちたくない。 持ってけ。 有難う存じます。 待て、 書き賃を置いていけ。 えっ。 そうか、身共が払うのか。

桂小南の「菜刀息子」前半2018/01/04 08:37

 桂小南治改メ桂小南、紙切りの林家正楽の息子だそうだ。 小柄、頭の真ん 中前方に少し毛がある、黒紋付の羽織に袴。 「菜刀息子」はナガタナムスコ、 菜刀包丁(ナガタナホウチョウ)は先の丸い菜っ切り包丁、ナガタン包丁とも 言う。 婆さん、倅の俊造には、包み紙を切る裁ち包丁を誂えて来いって、言 ったんだ。 こんな菜刀包丁、店で使えるか。 口上に間違いがなかったって …、包丁屋が悪いのか。 へぇい。 なおさら、勘弁できない、間違っていま すと言って、作り直して来い。 お父っつあん、この子は心根が優しいから、 断われない。 心根が優しいって、いったい幾つになったんだ。 ヒェッ、ヒ ェッ。 世間を見てみろ、よその倅は立派にやってる。 この子は、煙草も喫 わないし、月一円の小遣いも余らせます。 甲斐性がないんだ、俺なんか、親 父に言い返したもんだ。 出てけ、出てけ! 謝って、ほら、二階へ行きなさ い。 もう、飯はいい、お茶をもらおうか。

 ちょいと、俊造、下に降りて、ご飯を食べなさい。 開けるよ。 俊造! 俊 造! 俊造! どうした? 俊造がいませんよ。 親類の家でも行ったんだろ う、とんだ恥さらしだ。

 日が暮れて来ましたよ。 夜が更けてきましたよ。 これはちょいと、おか しいな、熊五郎の所へ使いを出そう。 この夜更けに亀どんが来ましたが、実 にどうも、ハッハッハ! 何かご用で? 実はうちの倅が…。 オッ、オッ、 ヘェ。 行きそうな所を書いておいたから、すまないが様子を見て来てもらい たい。

 アーーッ、寒い。 トントントン、今晩は! 今、開けます。 どうしたん です、こんな時分に。 いーえ、家には来ませんでしたよ。 トントントン、 今晩は! そうかい、家には来なかったよ、すまないね、寝たままで。 トン トントン、今晩は! ハッハッハ、あの親父ならな、そうかいそうかい、来な かったよ。 トントン。 来ませんでしたよ。 トントン。 来なかったよ、 俺ん所に来るわけねえだろう。

 どこにも、いませんでした。 奥で一本つけさせてある。 もう晩いですか ら。 じゃあ、持たしてやんな、お休み。 婆さん、閉めなさいよ、早く。 ど こへ行ったんでしょうね。 心配なんか、することはない。

 カァー、カァー、カァー。 豆腐ーーッ、生揚げ、がんもどーーき! お父 っつあん、夜が明けましたよ。 そろそろ、飯にするか。 火の用心! 火の 用心! うどーーん、鍋焼きうどん、うどーーん! とうとう、一日、帰って 来ませんでした。 いいんだよ、若い時分の苦労は、買ってでもしろっていう からな、身の為だ。

 コーン、コーン。 砂ーーッ、磨き砂ーーッ! たいそう、温ったかくなり ましたね。 そろそろ、春だね。 (三味線が鳴って)タケノコーーッ、フキ ッ! 菖蒲ーッ、独活(うど)ーッ! 朝顔の苗、夕顔の苗! 玉子、玉子、 玉子!

 カァー、カァー。 冷やっこい、冷やっこい、冷やし水! エーッ、定斎、 定斎屋でござい! 市岡新田の西瓜、種まで赤いよ! メダカ、金魚ーッ、金 魚ーッ!

 カァー、カァー。 屑ーーイッ、屑屋、お払い! エーッ、蜜柑どうです、 甘い蜜柑! 栗屋ーッ、焼き栗、丹波の焼き栗!

 カァー、カァー。 お宝、お宝、お宝、一富士二鷹三茄子! 蕎麦ーーッ、 蕎麦ーーッ、蕎麦ーーッ! 払いましょう、厄払い! 火の用心! 火の用心!  パタパタパタ、うどーーん、鍋焼きうどん、うどーーん!

桂小南の「菜刀息子」後半2018/01/05 07:23

 (熊五郎が仏壇を拝む) 熊さん、有難うございます。 早いもんで、もう 一年で。 たった一人の若旦那を…、どうぞ気を落さないように。 あれから 何の便りもなくて、評判の売卜(ばいぼく)、街頭の占いにも、みてもらいまし たが。 思いつめて、大川に身を投げたに違いない。 親思いの優しい子でし たよ。 気をしっかりお持ちになって。 熊さんは親切で、ドロップという西 洋の飴を、横浜あたりで贅沢をして…。 仏壇の花がきれいでしょう、花屋の 娘さんが持って来てくれて、本当の供養になります。

 彼岸の中日、観音様へお参りに行くか、羽織を出しな。 ゴーーン、時限の 鐘。 (三味線が入って)名代の唐辛子、胡麻、陳皮、罌粟(けし)、青のり、 麻の実、山椒入り、七色唐辛子! 祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。  江戸前の押し鮨はいかが! お茶屋で休ませてもらおう。 お父っつあん、く たびれましたね。 以前は、道の十町や二十町は平気だったんだが。 お茶が 来ましたよ。 いい色に出ている。 色の割には味がないお茶だな。 本堂の 裏に乞食が沢山いましたね、ちょっと施しをして来ます。 只やるんじゃない ぞ、何か芸をさせろ、芸を買ってやるんだ、大きな声で言わせなさい。

 右や左の旦那様、チーーン! 父が死んで、母は長らく患いまして。 順番 にあげるから、ハイ、ハイ、ハイ、ハイ。 地べたに座ってないで、何か敷い たらいいのに。 こんな小さな子供まで…、サア、あげるよ。 ハイ、ハイ、 ハイ、ハイ、これでみんなかい、もらってない人はいないか。 お前さんは、 まだ、手を出しな、気が弱いんだね。 アッ!!

 お父っつあん、シシシシシ、シュンゾウが、イイイイイ、イキテイマス! 馬 鹿、生きていたか。 一年の間、親の脛を齧らずに、生きていたか。 どこか に座っているのか。 座っています、本堂の裏に。 婆さん、人違いだ、帰ろ う、帰ろう。 行きやしません、帰りゃあしません、自分の腹を痛めた子は分 かる。 婆さん、罰が当たるぞ、お前さんが甘やかして、あのザマにしたんだ。  もう一苦労させて、私らが死んだ後も生活できるようにしたい、私の言ってい ることは間違っているか。 へぇ、帰りましょう。 姐さん、みたらし団子を 10本、餅もくれ。 お父っつあん、何をしてるんです、日が暮れて来ましたよ。  婆さん、餅と団子だ、あの乞食にやって来てくれないか。 さっきも言ったよ うに、只やるんじゃないぞ、何か芸をさせろ、芸を買ってやるんだ、大きな声 で言わせてやんなよ。

 お薦(こも)さん、施しです。 いいですか、あそこの旦那に聞こえるよう に、はっきりと、そう言いなさい。 ナガタン誂えまして(ながなが患いまし て)、難渋しておりまーーす!!