古今亭菊之丞「片棒」の本篇2018/12/08 07:17

 赤螺屋吝嗇兵衛(けちべえ)さんが聞く。 番頭さん、この身代をどの倅に 継がせたら、繁盛すると思うかね。 金、銀、鉄、三人の息子さんを、お試し になったらいかがです、ご当家に一大事が起きた時の、お金の使い方を聞いて みたら…。 そうか、私が死んだ時に、弔いをどう出すか、聞いてみよう。 倅 を呼んでくれないか、一人っつだよ。

金。 お父っつあんは、お年も万々歳だから、盛大に出したい。 通夜も二 晩出します、お寺は大きな増上寺か本願寺。 それ相応の料理屋で、お膳が並 ぶ、酒は土瓶に赤い観世縒(より)を付けて、ご婦人にはお土産をお持ち帰り 頂く、黒に金、中が赤の、本塗りの漆の重箱を誂えて、丹後縮緬のフルシキに 包む。 ご遠方の方にはお車代を、今日日、二円、袋に黒一本筋、赤螺屋とし て、喜んでお持ち帰りいただけるでしょう。 吝嗇兵衛さん、私が行きたいよ、 いったい幾らかかるんだ。 一人百円はかかる、三千五百人ほど。 はい、分 かりました、あっち行け、馬鹿。 お前が生きている内は、死なないよ、動悸 がしてきた。

銀か、どうした。 お父っつあん、陽気にやってよ、わーーーッと。 通夜 は、一晩でいい。 破天荒、未曾有、色っぽい弔いをやりましょう。 紅白の 幕を張り、鳶頭連中の木遣りの先導、ヨーーーエーーー、手古舞が出る、新橋、 葭町、柳橋の芸者衆、左手に提灯、右手に金棒を持って、シャンコン、シャン コンと練り歩く。 次に山車が出る、上にはお父っつあんの人形、手にソロバ ン、いかにも因業な、こんな顔(と、やって見せ)、神田囃子が屋台の打ち込み、 テンテン、スケテンテン、チヒャーーリ、ピーヒャラ、トントン、人形が仕掛 けで動く。 曲り角で、調子が変わる。 オヒャーリ、トロトロ、ピィー、ピ ィーヒャラ、テンテン。 神輿を出そう、お父っつあんのお骨が入っているの で、隣町の連中に取られないようにする。 囃子が早くなって、ワッソー、ワ ッソー、テンツク、テレツク、テンテン。 いつまでやってるんだ、うるさい よ。 花火屋が花火を上げて、位牌の落下傘が降って来る。 一同「バンサー イ」。

鉄か、こっちにお入り。 首ヘコヘコして、ニワトリか。 仕方がありませ んから、弔いを出します。 通知を出す、出棺の時間を朝十時と知らせておい て、実際には八時に出棺。 残念、申し訳ないと言えば、皆さん、お帰りにな る。 酒も、料理も出さない。 棺桶も菜漬の樽にする、親コーコー、臭い物 には蓋。 棺桶に詰めるもの、売ってるよ。 新聞紙でご辛抱願います、蓋は します?  担ぎ手は、人足を雇うのだろう?  お父っつあんのお言葉とも 思えません、私が担いで、もう一方は人足を雇う。 そんな無駄なことを…、 お父っつあんが担いでやる。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
「等々力」を漢字一字で書いて下さい?

コメント:

トラックバック