江戸湾の洲と根、根釣りと山立て2005/12/02 08:41

 津軽采女の『何羨録』が釣りの指南書・技術書として、いかに優れているか ということに関連して、夢枕さんは江戸浦(湾)の釣りのポイントの記述につい て話した。 「洲」や「根」というのがある。 長辻象平さんの『江戸の釣り』 も参照して書くと、鉄砲洲から芝・品川沖までに、たとえば春キスの釣り場を 30個所ほど挙げ、「洲」や「澪(みお)」の名で位置を示しながら、それぞれの 場所の特徴を述べているという。 隅田川の河口に位置する佃島の沖合いから 南へ向けてのびる「間之洲(あいのす)」という大きな「洲」があり、その東側 に「出洲」、西側に昨日出てきた「黒鯛の洲」がある。 「間之洲」の東の高み (浅い所)は、アオギスの釣り場とある。 今、アオギスは絶滅危惧種で、日本 で一箇所、ある時期だけ、釣れる場所がある話を夢枕さんはしたが、その内容 はインターネットには書くな、ということだった(笑)。

「根」というのは、海底から高くせり上がっている大きな岩礁などのことで、 魚が集まるので格好の釣り場とされている。 津軽采女は、全部で25の「根」 を挙げている。 「根」は一般に「自然石」だが、「江戸根」と「荒根」だけは、 江戸城築城の際、伊豆半島で切り出された石材を運搬中の、肥後の大名加藤清 正の石船7隻が嵐で沈没したものだという。 「根釣り」の船頭は、「山立て」 という目視の方法、つまり海岸の建物や遠方の山の峰などの目標物を重ね合わ せながら、海上の位置を特定し、「根」の真上に舟をつけた。 だから日の出前 に出漁しても、日が昇って諸方の山々が見えるようになるまで待たないと、「根 釣り」は始められなかった。 其角の句に、こんなのがあるそうだ。

    ほのぼのと朝飯匂ふ根釣かな