蓼科の康耀堂(こうようどう)美術館2005/08/06 11:08

 5日、前から一度行ってみたかった茅野の康耀堂(こうようどう)美術館を見 て来ることができた。 家内の中学時代の同級生で、蓼科の落葉松林の中に山 荘をお持ちの川口さんご夫妻が、高原の快適な一日をセットしてくださったか らである。

 康耀堂美術館は、5年前の平成13年7月佐鳥電機社長の佐鳥康郎さんがオー プンした。 佐鳥電機は、会社に通っていた頃、浜松町あたりの第一京浜で看 板を目にしていた会社だと思う。 佐鳥さんが長年個人で蒐集してきたご自分 の琴線にふれた近・現代の日本画、洋画を、大好きな蓼科の地に美術館を建て て万人に公開したと、『芸術新潮』だったかで見て、ぜひ訪れたいと思ったのだ った。

 今回、佐鳥康郎さんが絵画への憧憬を抱いたのは、敗戦の昭和20年の中学 生の時に、岩波書店の『少年美術館』のシリーズに心をゆさぶられたからだと 知った。 このシリーズは、よく憶えている。 戦後、兄の家庭教師として来 ていた東京商大の学生、石川禎勇先生が選んだ本の中にあったからだ。 父が 子供のためによい本を買ってきてくれと頼んだのだろう。 私は小学校に上が る頃だったので、うろおぼえだが、芥川龍之介の『杜子春・アグニの神』や当 時新しい歴史書だった『火の歴史』などもあった。   佐鳥さんだが、昨年10月、不意の病に倒れ、想い半ば72歳で亡くなられた という。 これから大好きな蓼科で、大好きな絵画にひたれることを、楽しみ にしていた矢先に、とパンフレットにある。 残念なことだったろう。

 美術館は、茅野市豊平の「縄文のヴィーナス」で知られる縄文遺跡、尖石縄 文考古館の筋向い、6000坪の落葉松の森の中にある。 建物も素敵で、きれい になっており、スリッパに履き替えるスタイル。 ただ回廊に展示されている 絵のアクリル板(一応配慮してガラスでない)が、外光を映しこむのが気になっ た。 絵は、有名どころもあるが、佐鳥さんの目で選んだ(応援もしたのだろう)、 私などは名を知らない画家のものも多く、とても新鮮な印象を受けた。