コロナ下、小三治前進<等々力短信 第1141号 2021(令和3).3.25.>2021/03/12 07:15

 柳家小三治(81)、2020年は開店休業で、感覚を失いかけた。 よく生きて いるよ、と言う。 3月から半年、高座に上がれなかったと、倉田美紀マネー ジャーは、×だらけのスケジュール表を見せる。 NHKのBS1「ザ・ヒュー マン」3月6日(飛田陽子ディレクター)がコロナの冬の小三治に密着、その 姿を追った。 12月7日、池袋の東京芸術劇場の独演会、満席の客を入れてい る。 腹の底から、腹で声を出して、と試す。 黒紋付で、持つかな、行って くるよ、と高座へ。 近頃、破れた障子みたいな客席で演ってまして、ソーシ ャル・ディスタンスてんですか、えらい時にめぐり合わせましたね、皆さん。 「野ざらし」、いーい女だね、この世の者でないってえと、あの世の者、おば…、 幽……。 40分。 10分間休憩。 喉が渇くので、湯呑にレモン系のものを 入れる。 藤色縦縞の着流しに着替えて出、しばらくお目にかかりませんでし たが、お元気でいらっしゃいましたか、つまりーその、何だね、と「長短」を 始めた。

 小三治、本名は郡山剛蔵、父の郡山繁蔵は小学校校長、その反対を押し切っ て、19歳で柳家小さんに入門、29歳17人抜きで真打に昇進した。 落語が好 き、人が生きるってことを見せてくれる、これをやる以外なかった。 人物描 写に定評があり、人間のおかしみを、自然に醸し出す。 2014年、人間国宝に。 いつまでも、この道を求めて行きたい。 いつも自分の中で、自分と競争して いる、こんな芸でいいのか。

 4年前、変形性頚椎症で手術、成功したが、定期的検査を受けている。 長 年リウマチと闘う、演じている最中、手首に痛みが走ることがあり、旅先でも 注射が欠かせないと、腹に打つ。 京都で、柳家三三(真打になって15年) と親子会、80歳最後の高座とマネージャー。 信じられない、だましてるだろ、 お前。 呆然とする、嘘じゃないかって思っちゃう。 お昼寝の時間だ。 大丈 夫ですか。 大丈夫じゃなくっても、だんだん大丈夫になってくる。 まず三 三の出番。 お先に勉強させて頂きました。 短いよ。 「錦の袈裟」、今朝は 帰しません、駄目だ、袈裟返さないとお寺をしくじる。

 80代になって、移動は負担が大きい。 一週間後、仙台。 嬉しいよ、生ま れ故郷のように思っている。 幼時、宮城県岩沼、両親の故里に母に連れられ て疎開し、母は戻って来なかった。 台所で水仕事をしているおばさんを、「お ばちゃん」と呼ぶか「お母ちゃん」か迷って、両方試す。 どちらも「あいよ」 と仙台弁。 心の故郷だ。

 1月8日、仕事始めは府中の森芸術劇場の柳家一門会。 柳家十八番「粗忽 長屋」。とっても良かった、お客さんがいて初めて落語、何百年も続いている。 今日は面白かった、もう一遍やってと言われても、できない、落語って面白い ね。

(《口上》コロナ禍の巣籠りで時間がありまして、「等々力短信」早く出来た時 には、日にちに関係なく、アップすることにしました。よろしく。)

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