「墓じまい 社会で考えるとき」2024/01/26 07:09

11月の「等々力短信」第1173号に、 徳川慶喜家の「墓じまい」を書いた。(ブログは11.16.発信) すると、自分の家は子供がいないとか、娘だけなので、考えなければならないとか、実際に墓じまいをしたなどという反響が多かった。 12月18日の朝日新聞朝刊には、「墓じまい 社会で考えるとき」の見出しで、11月27日配信の朝日新聞デジタルの記者サロン「墓じまいを考える」が、行われたことを報じた。 連載「大名家の墓じまい」を書いた森下香枝記者は、先に「『無縁遺骨』を追う」という連載をしていて、連載に大幅に加筆した『ルポ 無縁遺骨 誰があなたを引き取るか』(朝日新聞出版)を11月に出版していた。

 高齢化や核家族化が進むなか、お墓の管理ができない、家の後継ぎがいないなどの事情から「墓じまい」をする人が増えているが、引き取り手のない「無縁遺骨」の増加も深刻化しているという。 一昨年夏に俳優の島田陽子さんが亡くなったのだが、遺体の引き取り手がなく、行政によって荼毘にふされたことが、森下記者が「『無縁遺骨』を追う」連載のきっかけになった。

 その秋には皇室ジャーナリストの渡辺みどりさんが自宅で「ひとり死」し、一線で活躍した人々も、こういうかたちで亡くなることがあるのだと驚いて、本格的に取材を始める。 一人暮らしで身寄りがなかった渡辺さんの場合、死亡届を出すのもひと苦労だったそうだ。 死後数日たって発見されたため「異状死」として解剖され、希望した献体もかなわなかったし、遺言書はあっても想定外のことが多々あって、「想定外」への備えも必要なのだ、と教えられたという。 ただ、一周忌では多くの友人たちが非常に明るく渡辺さんの話をされていて、家族はいなかったけれど、皆から慕われ、きちんと見送られたのはよかったと思ったそうだ。

 行政のとりくみでは、横須賀市は身寄りのない一人暮らしの人などを対象に、死亡届人の確保や葬儀・納骨の生前契約を支援する事業を導入しており、「終活登録」を受け付けている自治体もあるが、こうした事例はまだ限られているという。

 1月中旬からは、森下香枝記者の新たな連載「自然に還る 変わる葬送のかたち」(全5回)も始まった。(朝日新聞デジタルでは12月22日から全て読める)