一琴の「蛙茶番」 ― 2013/07/22 06:36
暑い頃に見るタイプの芸人ではないと、一琴は言うけれど、少し痩せ、頭も きれいに刈って、すっきりしている。 明後日から夏休み、男の子が二人、上 は高三、下は中一。 噺家は、いつも家にいる。 うるさいガキだが、生まれ た頃は可愛かった、食べちゃいたいほどだった。 今、なぜ、あの頃食べちゃ わなかったのかと、思う。 読書感想文、父親がやる宿題だ。 8月30日に書 き上げ、31日に子供が汚い字で清書する。 10日ほどして、赤ペンで評が書 かれて返って来る。 主人公の気持がぜんぜんわかっていない、と噺家の本質 にかかわる批判だ。
「蛙茶番」、伊勢屋で素人芝居があるが、半公が腹痛だと言って出て来ない。 舞台番を当てられたのが役不足、仮病に違いないと、近所の娘さん、おかみさ ん達が、半さんはどうしたって言っていると、貞吉を四度目の迎えにやる。 半 公は形(ナリ)を派手にしたいが、よれよれの着物しかない、そうだ去年の祭 で櫓(やぐら)の上でして受けた緋縮緬のふんどしだと、思いつく。 湯に行 く途中、三丁目の旦那に会い、外は地味だが、中は派手と、まくって見せて、 くわえて引っ張るとチリチリ音がする、と自慢。 立派なもんだ、と言われる。 ふんどしを番台に預け、顔をゴシゴシやっているところを、呼びに来られて、 預けたのを忘れて飛び出す。
舞台番が、半畳へ座って、『天竺徳兵衛韓噺(いこくばなし)』の幕が開く。 天 竺徳兵衛を提灯屋のブラ衛門、赤松満祐の亡霊を飾り屋の銀公。 「成駒屋!」 「音羽屋!」「高島屋!」と声が掛かる、「三越!」「伊勢丹!」。 舞台番が、一人で騒いでいる。 ご覧なさい、半公の膝が三つある。 馬鹿 だねえ。 「半ちゃん、日本一、大道具!」、得意になって裾をまくる。 前の 方の娘連中が目を伏せる。 「女殺し!」 肝心のガマガエルが出て来ない。 貞吉、どうしてガマが出ないんだ。 ガ マは出られません、半ちゃんの股グラで青大将が狙っています。
一琴、この馬鹿噺を、暑苦しくならず、さらっと演じてみせた。
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