即位十年の日本と世界、そして政府2020/05/16 07:08

 島田雅彦さんの小説『スノードロップ』を読む。 不二子皇后と、結婚する 時「命懸けで君を守る」と約束してくれた夫との娘は舞子、弟宮妃は桐子さん、 その息子は清仁ちゃん、平成様妃は真知子様である。 アメリカはジョーカー 大統領、中国は李錦記首席、ロシアは何とラスプーチン大統領だ。 表紙と扉 には「いつの時代ともしれないが、そう遠くない未来の物語。」とあるけれど、 ラスプーチン大統領の今回の来日は即位十年のお祝いで、上皇様は亡くなって いる。 舞子さまは結婚しておらず、憲法は変わっていないようだ。

 夫は、ここだけの話だよ、と不二子皇后に、「改元の時も政府が勝手に決めた 元号を押し付けてきた。私の諡(おくりな)になるというのに、当時の目立ち たがりの総理が自分の名前の一文字をあしらった案を持ってきて、「これでよろ しいですね」といった。」 「あなたは珍しく立腹されて、拒否なさいましたね。」  「それで令和になったわけだが、悪政にうんざりした詠み人の気持ちが込めら れていることに無教養な政治家たちは誰一人として気づかなかった。この皮肉 には苦笑したが、お陰で一部の人々の目には私は厭世的な天皇と映ったかもし れない。」

 物語の政府は、こうだ。 「政府は先ごろの衆議院選挙で安定多数を確保し たのをいいことに、さらなる増税と年金削減に踏み切りました。今や千円の買 い物をするのに千二百円払わなければならず、最低賃金も据え置かれたという のに、依然、有権者が政権を支持していることがにわかには信じられません。」 「政府は国民を富裕層、中間層、貧困層に分断し、さらに政治的無関心へと誘 導し、組織的な得票で絶対多数を確保し、国民の信託を得たことにしているの ですが、その結果、もっとも凡庸な男が独裁者になる構造が生まれてしまいま した。」