柳亭市楽の「四段目」2015/09/05 06:37

 8月は、落語を書かなかった。 8月31日は第566回の落語研究会だった。   「四段目」      柳亭 市楽

「転宅」       古今亭 文菊

「祇園会」      橘家 圓太郎

      仲入

「宗漢」       柳家 喬太郎

「らくだ」      柳家 喜多八

 市楽は、師匠の市馬に芝居を観ろといわれるが、学生時代(早稲田)から観 ていたという。 寄席と時間が同じなので、なかなか観られない。 一幕見席 に並んでいたら、師匠から電話があった。 歌舞伎座の前だというと、それな ら芝居を観ろと言われた。 自分の中の悪魔がささやいた、「サボレルゾ」。 仲 間と飲んでいる時、師匠から電話があった。 つい、歌舞伎座の前だというと、 隣の奴が「イッキ!イッキ!」と叫んだ。  しか芝居、われもわれもという師匠連中が大勢いるから、師匠の市馬は歌い 手になった。 「菅原伝授手習鑑」で高い声でセリフを言う菅原道真の倅、菅 秀才(かんしゅうさい)を雲助師匠が演ったと、雲助の声色でやる。

番頭さん、貞吉はまだ帰ってこないのかい、と「四段目」に入る。 伊勢屋へ使いに出した芝居好きの小僧貞吉、戻って旦那に呼ばれる。 朝8時に出て、 今は午後4時、伊勢屋さんは目と鼻の先だ、芝居を観ていたんだろう。 帰る 途中で、おっ母さんに出くわした。 お父っつあんが、去年の秋から足腰の立 たない病になった。 お百度を踏んでいるというので、一緒に行った。 うち の方(かた)で、正月に年始に見えたのは、誰だ。 あれは、おっ母さんの連れ合いで…。 お前は芝居好きだと、みんなが言っている。 みんなは私の出 世を妬んで、そんなことを言う、私は芝居は嫌いです。 明後日、店一同で芝 居見物に行く、ちょうどよかった、お前は留守番だ。 御奉公ですから、行か せていただきます。 お向こうの佐平さんが芝居を見て来て、「忠臣蔵」の「五 段目」、猪の前足を松本幸四郎、後足を松下幸之助がやるだそうだ。 そんなこ とは、ありません、あれは一人でやるんです、今、あたい観ていたんですから。  やっぱり、芝居を観てたんだな。 あっ、ヤカンに謀られた。 蔵の中に、入 っていろ、ビシーーーン。 おなかペコペコ、お清どーん、何か食べるものを ……、あれ、行っちゃった。

怖いなあ、芝居の真似事でもするか。 「四段目」塩谷判官切腹の場、太棹 が「ベーーン」、上使二人に、力弥、判官様。 「力弥、力弥、由良之助は?」 「いまだ参上仕りませぬ」。 「デェーーン」、「デェーーン」、いよいよ切腹、 由良之助が花道から、ツツツツとそばに寄る、「御前ぇーーん」「由良之助か」。  いいとこだけど、おなかが空いた、死にそうだ、新聞に出るよ、横暴な雇い主、 いたいけな小僧を餓死させる。 お清が覗くと貞吉が腹を切っている。 慌て て「蔵吉どんが、貞の中で、腹を切ってます」。 旦那がおひつを持って駆けつ ける。 「御膳だ」「蔵の内でか」「やー、待ち兼ねた」。

市楽の「四段目」、なかなかの出来だった。