扇橋の「彌次郎」 ― 2008/04/03 07:15
入船亭扇橋は、足がだいぶ弱ったのか、よぼよぼ出てきて、例によって震え ながら、ぼそぼそ「彌次郎」を始めた。 彌次郎は北海道を旅してきた。 ひ どく寒い。 お酒は、おかじり下さい、という。 歯の悪い人は、酒を呑めな い。 「おはよう」が凍って、「おはよう玉」になる。 いくつか拾ってきて、 目覚ましに使う。 鍋の上に、二つか三つ乗せておくと、「おはよう、おはよう、 おはよう」 火事が凍る。 「カチャカチャカチャ」と凍る。 このあたりの 扇橋の、とぼけた味がいい。 夜が明けて、凍った火事を見に行く。 粉雪が かかって、大きなサンゴのようだ。 何かに使おうと、のこぎりで切って、牛 の背中に乗せて持って帰る。 そのうちに牛の背中がボーボー燃え出す。 水 をかけても、焼け牛に水。 牛がモーいやだ、と言う。 小便をすると途中で 凍るから、木槌を持っていて、カチン、シャー、カチン、シャーと、やる。
剣術修業の旅に出て、南部の恐山の麓まで来ると、山越えはおよしなさい、 と言われた。 山に登って十五、六人の山賊と戦ったり、大イノシシに後ろ前 にまたがって金絞りにして退治したら、その腹からシシの子が16匹「とうち ゃんの仇」と飛び出した。 オスの腹から子が出るか、とつっこまれると、そ れが畜生の浅ましさ。 と、全部やっていると大変なので中略。 ズンズンバ タバタ、ズンバタバタ、逃げてきたのは紀州の日高川、道成寺に釣鐘代わりの 水甕が出てくる。 清姫は焦がれ死にして一尺ほどの蛇になり、水甕を七回り 半巻く、一尺でそんなに巻けるか、甕のまわりにナメクジがいて蛇が溶けてし まう。 安珍というのは山伏、道理でホラを吹いた。 なんだか訳がわからな いながら、扇橋のおとぼけにひきづられて、笑っているうちに、この落ちまで 来る。 十二分に楽しめた。
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