「干しガキ」の大団円2008/05/07 07:07

 おかみさんが一晩中つきっきりで、オギャーと生まれた男の子、少々難あり で胸に穴が開いてはいたが、子の無かった夫婦は、目元はお前、口元は俺に似 ていないか、と大喜び、新太郎と名付けて、大切に育てた。 15年が経ち(あ っという間に)、八五郎も一生懸命働いたので、材木屋の店を持っていた。 新 太郎は、父親に言われて相模屋に板を二枚届けに行く。 八五郎は、途中の煙 草屋の前で、いつものように大きな声で、「おばさん、こんにちは」って言うん じゃない、と言う。 昨夜、死んだんだ、そっとしとけ、それが情だ。 新太 郎は「人が死ぬと悲しいか、一度死んでみてくれねえかな」などと言う。 (新 太郎、まっすぐに育っているが、どこか少々難ありなのだった)。 相模屋の店 先でごちゃごちゃもめていたのを、娘のお美代が助けてくれた。 かなは読め るけれど、書けないという新太郎に、お美代が習字を教えてくれることになる。  熱心に通う新太郎、相模屋の主は心配して、跡取のお美代に必要なのは友達で なく、婿だと、新太郎を家に上げるな、ということになる。

 お美代は食事もとらず、庭を見て泣くばかり、医者に長いことはないと言わ れて、相模屋は新太郎を家に上げることにする。 「許しておくれ」「許すって 何です、腐っちゃったの」 お美代が泣き通しと聞いて、新太郎は「おなかが 空いてんだ、何か食べな」と言う。 お美代が笑った。

 新太郎の損得のない看護で、お美代は外出できるまで元気になった。 桜や 菜の花のきれいな土手、お美代のところに向こう岸から泳いできてしまった新 太郎に「新ちゃん、私、好き」、「おいらも、好き」と言いかけて「アーア、痛 い」と胸を押さえる、穴がふさがっていた。 「おいら、美代ちゃんが、好き」 「着物を乾かさないと」「二度と干されたくない」

 落語っぽいところもある、この不可思議な新作を、さん喬は見事に語ったの であった。 私が二日にわたって梗概(名前の表記などは独断)を記したのは、 その何よりの証拠である。

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