生志「猫の皿」のマクラ2015/11/04 06:31

 昨日まで二週間ヨーロッパに行って来たという。 プログラムの長井好弘さ んによると、一昨年の秋、噺家生活25年を機に「ワールドツアー」を始め、 パリ、ニューヨーク、ボストンで公演したそうだ。 今回はミュンヘンに一週 間いて、ミュンヘン大学の日本語学科などで落語を演り、パリに回って、帰っ て来た。 人種のルツボの中にいて、今日は由緒ある落語研究会、ほっとする な、と思って、やって来た。 ここの楽屋は靴を脱ぐ、下足番の名札が私だけ 「立川生志」とフルネームになっていた。 何で? 疎外感がある。 何で?  外人枠みたい。 ほかは落語協会の皆さんだけれど、不思議だ。 下足番のお じさんに聞いたが、黙ってた。 何か、言ってほしい。 さっき、また見に行 ったら、なぜか、それぞれの亭号が、鉛筆で書いてあった。 立川流というの は、気にしない。 わが道を行く。 落語研究会に出てる人は少ないので、有 難いと思っている。 自分では、馴染んでいるというつもり。 立川流のハト 派、といわれている。

 パリから12時間、日本の青い方の航空会社で帰って来た。 今月、機内の 落語は志の輔で、すぐに止めてしまった。 赤い方の航空会社、10月中の国内 線は、私。 いま、日本の空には、ジェット気流と立川流が流れている。 林 家三平君(?)からメールが来た。 機内で「紺屋高尾」聴きました、「グッ、 ジョッブ!」。 落語研究会でネタおろしですか、頑張りますね、これから松山 でご飯です(林家三平は「松山めで鯛使」だそうだから、三平だろう)。 「グ ッ、ジョッブ!」はないだろうが、「坊ちゃん」三平君だからいいか。

 飛行機の運賃が安くなった。 それにつれて、CA(キャビンアテンダント) さんも、以前ほどは胸の高鳴りのしない、旅回りみたいな感じになった。 CA さんに、機内誌の写真を指して「これ、僕」って、言う。 ハッ、ご本人で、 私はまだお聴きしてませんが…。 チーフ・パーサーが来て、白い制服、年も 上の、首のまわりに年輪が刻まれている…、よかったらと、ノドにいい飴をく れた。 前回のチーフ・パーサーは、実物の方がすてきですね、と言った。

 青い方の航空会社のCA、「これ、僕」ってやったら、「アーーアッ」と、両 手を一杯に広げたリアクション。 この方、この方よ、と、すごいリアクショ ン。 二人目も、オーバー・ゼスチャー。 ことによると、研修を受けている。  研修を受けてるに違いない。

 昔も、旅をして回る商売があった。 道具屋、と「猫の皿」に入った。