三遊亭兼好の「高砂や」2015/11/19 06:32

 介錯人を頼まれた。 媒酌人、仲人だろう、よかったな。 あれ、ツガイで 行くんだろ。 仲人は夫婦でする。 それが嫌ヤ、カカアはうるせえ。 テエ (鯛)しゃぶるな、酒の残りをタモトに入れるなって、ね。 浴衣は駄目かね え。 黒紋付羽織袴と決まっている。 ないよ。 あっただろ。 質に入れて、 流しちゃった。 借りに来た。 婆さん、出してやんな、箪笥の下から二段目 にあるだろう。 猫を下ろせ、猫抱えたままじゃ、めくれないだろう。 ない?  上から二段目です。 上から二段目だそうだ。 あったか。 何で、お前が知 ってるんだ。 先日来ましたらお留守でね、上がって待っていて、羊羹を一本 食べて、箪笥を一段ずつ調べた。 まるで泥棒だね。 婆さん、羊羹食べたの は、俺じゃなかったろう。

 御祝儀は、出来んのかい? 御祝儀って、何です。 「高砂や」なんかを謡 う。 間に合いますかね。 婚礼はいつだ。 明日。 今、覚えちまいます、 いっぺんで。 姿勢を正して、腰に扇子、目は鴨居のあたりを見て、「♪高砂 やこの浦舟に帆を上げて………」。 よくそういう動物を絞め殺すような声が出 ますね。 やってみな。 「………」。 声、出しな。 「タカタカ、タカタカ …」。 蛙だな。 「タカタカ、ケーーッ、コッ」。 ニワトリだよ。 (いき んで)「タッ、カッ、サッ、ゴォッ、ヤーーッ」。 ハァーッ、紙一枚下さい。  不器用だね。 そうだ、豆腐屋の徳さんの真似がうまいって、聞いたよ、やっ てみてくれ。 「トウフィー、トウフィー!」 その調子で。 「タッカ、フ ィーーッ」。 そうそう。 「タッカサゴヤーーッ、サオダケーッ」。 「タッ カサゴヤーーッ、コノウラフネニーッ、ホヲアゲテーーッ」。 そうだ、まあい いだろう、そこまでやれば、あとは皆さんでとか、私が…、という人が出てく る。 家で稽古をして、当日になります。

 お仲人様に、ここらで御祝儀を一つ…。 あれ、鴨居がない。 「タカタカ」 (と調子を調べ、荷を担いだかっこうをして)「トウフィー! タッカサゴヤー ーッ、コノウラフネニーッ、ホヲアゲテーーッ」。 皆さんで、続きをお願いし ます。 不調法者揃いで、どうぞ、続きを。 「コノウラフネニーッ、ホヲア ゲテーーッ、ホヲサゲテーーッ…」。 下げちゃあ、駄目ですよ。 「コノウラ フネニーッ………、誰か、私に助け舟を!」