「大神宮」「粟餅」「廓大学」2010/12/10 07:06

 題名からちょっと気になっていて、『志ん生廓ばなし』の「廓ばなしご案内」 で“あらすじ”がわかったものを、二、三紹介してみよう。

 「大神宮」(「おはらい(「大神宮の女郎買い」)」)。 明治初年まで、浅草の雷 門のわきに磯部大神宮という神社があったのだそうで、吉原への客がみんなこ の境内を通って行った。 その連中が毎晩、モテた話、フラれた話などを交わ しながら通り過ぎるので、大神宮さまも、吉原田ン圃のカエルと同様に、吉原 というところに異常な関心を持った。 でも一人ではナンだというので、近く の東本願寺の門跡さまを誘って出かける。 すっかりモテて、さてその翌朝、 若い衆が、門跡さまのほうへ請求書(つけ)をもって、「えー、お払いを願いま す」とゆく。 「あァ、お祓いなら、大神宮さまへゆきなさい」というのがサ ゲ。 この噺、大神宮を通る男たちの、女郎屋からモノを持ち出してくるコン クールのような騒ぎが面白い、のだそうだ。

 「あわもち」(「粟餅」)。 町内の若い衆が四、五人で吉原にくりこむが、た だの遊びじゃァつまらないと、例によって趣向をかんがえる。 粟餅と灰色が かった砂糖を買い、与太郎がその粟餅と砂糖をこねて、ふとんの上に人糞のか っこうにつくっておく。 遊女はてっきり本物とびっくりするのを、連中が芝 居で喧嘩を始め、「くそくらえ」「あァ喰ってやらあ」と、みんなで喰い始める という遊び。

 「廓大学」。 出だしは「二階ぞめき」にそっくりだ。 ひとり息子の道楽に 堪忍袋の緒を切った父親がダンゼン勘当というのを、番頭が「まァ、そうおっ しゃらないで、いま一度だけお聞き済みに願いたい。実は……」、二階に上がっ てみたら、若旦那が『大学』(中国の四書の一つ)を読みながら、今までの自分 を反省し、親の恩に感謝していると、市川海老蔵みたいなことを言っている、 と告げる。

 半信半疑で、親父が二階に上がってゆくと、せがれは吉原に思いをはせて、 さかんにひとりごと。「この馬鹿野郎ッ」「あッ、おとっつァん」「なにが『大学』 の素読だい」「ここにございます、コレなんで」「大層小さな本だな」「こんど改 訂された『廓大学』で」  そこから廓情緒と『大学』の文章がドッキングする。 「なんだい、この女 郎買いは、花魁を買うに限る、新造(しんぞ)がやりくりをして、禿(かむろ) が居眠りをするというのは?」「それは、女郎買いとなりては花魁にとどまる、 新造となりてはやりくりにとどまる、禿となりては居眠りにとどまる」「積み夜 具がなかったが本床(ほんどこ)をやるとか、すると大事にするなんてぇのは?」 「夜具を新たにするにあり、自然に大切にするにあり」 親父が本を手にとる と、松山玉章(まつやまたまずさ)という花魁からの恋文が落ちた。 「何だ こりゃァ」「おとっさん、マツヤマ、タマズサとお読みになってはいけません、 ショウザン、ギョクショウとお読みを願いたいねえ、ともに儒者の名でござい ます」「そんな先生がどこにいるんだい」「行ってごろうじろ、ズラリ格子(孔 子)のうちにおります」というサゲ。 めくらの小せんという名人が、こう演 じていたそうだ。

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