わか馬の「鷺とり」2009/07/15 05:40

 渋沢敬三さんと、「等々力短信」千号の会の話を書いている間にも、書きたい ことは沢山あった。 ぼちぼち、それらに取り掛かることにする。 6月30日 は、第492回落語研究会。

 「鷺とり」      鈴々舎 わか馬

 「酢豆腐」      桂 ひな太郎

 「髪結新三(上)」   五街道 雲助

          仲入

 「ろくろ首」     柳家 三三

 「布哇の雪」     柳家 喬太郎

 わか馬の出は「スーダラ節」、2007年1月に「あくび指南」を将来有望と褒 め、2008年4月に「六尺棒」を少しくさしていた。 研究会の最初に登場する 二ツ目のなかでは、上々の部類。 落語は、バカバカしくて、あきらかに無駄 なものだから、心にゆとりがあり、文化的なレベルの高い人にしか、理解でき ない。 その中でも「鷺とり」は、とりわけてバカバカしい噺だ、と。

夜の上野不忍池、一面の鷺だ。 その鷺を捕まえようという男、「サギー!」 と呼びかける声を、近づくたびに小さくして行き、真後ろから鷺の頭をトンカ チで「パコン」と叩く。 長い首を帯に差し込んでぶら下げ、次の鷺を「パコ ン」、どんどん「パコン」「パコン」。 腰のまわりに鷺がびっしりとなったとこ ろで、夜が白々と明けた。 目を覚ました鷺たちが、ひのふのみで一斉に羽ば たいたから、たまらない。 男は、中天高く泳ぐようになって、まるでサギにあったよう。 気がつけば、浅草寺の五重塔のてっぺんにいた。 まわり中の 人だかり、店まで出ている。 坊主が四人、大きな布団を持ち出してきて、飛 び降りろと言っている。 意を決して飛び降りると、坊主が布団をきつく引っ 張っていたため、反動でポーンと飛び上がり、また五重塔のてっぺんに戻った。  次は布団をゆるめて持つ。 男が飛び降りると、緩め過ぎたのか、四人の坊主 が真ん中に引っ張られて、頭がガチガチガチ、坊主の目から出た火が、江戸の 半分を焼く火事となったという。 めでたし、めでたし(これは馬場がつけ加 えた)。