本井英主宰の季題研究【初富士】2017/01/18 06:29

 季題研究の当番が主宰にも回って来るのは、子規に始まる書生っぽの句会以 来の、俳句の会らしい平等主義である。 「初富士」と「寒鴉」の句会の季題 研究は本井英主宰で、「初富士」を取り上げられた。 

 季題【初富士】についての各歳時記の解説はほとんど、近代の代表的歳時記 である中谷無涯『新修歳時記』(明治42年刊)のつぎの説明を継承している。 「(新年・地理) 初富士 元日。富士を見ることにて『東都歳時記』に「初富 士、東都見物の最初たるべし。されば江戸の中央日本橋あたりを以て佳境とす るにや、又駿河台お茶の水 其余 高き処より眺望す。深川万年橋の辺をいに しへ富士見ケ関と呼びけるとぞ、富士を見るによし。」 初富士の裾や静に波の 音 柑子」 初富士に触れたものは、『東都歳時記』以外、近世に他に文献がな い。 そこに出る地名は「富嶽百景」に重なる。 古くは深川万年橋のあたり に江戸の入口の船番所「富士見ケ関」があった。

 和歌に詠まれた【富士】をみてみる。(例歌は、挙げられたものの一部)

我妹子(わぎもこ)に逢ふよしをなみ駿河なる富士の高嶺の燃えつつあらむ(『万葉集』巻十一)

君といへば見まれ見ずまれ富士の嶺のめづらしげなく燃ゆる我が恋(『古今集』恋四)

 まず≪炎、火山≫、恋の炎、活火山として詠まれる。 遠い都の人、150人 から200人の歌を詠むような階級の人は、京都を出ない。 受領(ずりょう) 階級(諸国の長官)の人は出るが…。 つづいて、≪雪≫超絶したもの、とし て詠まれる。

富士の嶺に降りおく雪は六月(みなづき)の十五日(もち)に消ぬればその夜降りけれ(『万葉集』巻三)

 さらに、≪エキゾチシズム≫を詠む。

八重霞煙も見えずなりぬなり富士の高嶺の夕暮れの空(『後鳥羽院集』)

 やがて、≪霊峰≫、他の国にない日本の象徴。 ≪炎、火山≫→≪雪≫→≪ エキゾチシズム≫→≪霊峰≫へと、段々にイメージが醸成されてきた。

空にみつ大和島根に二つなき宝となれるふじの柴山(契沖「詠富士山百首和歌」)

 契沖は、元禄の歌人、万葉集や、奈良時代の日本語を研究した国学者。中国 でも、バテレンでもないものを、探求した。

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