台所おさんの「馬の田楽」 ― 2016/07/20 06:29
黒の羽織に黒の着物、チョコチョコと出て来る。 坊主頭のギョロ目、歯が 出ている。 台所鬼〆から、真打になって台所おさんになった。 ふざけた名 前だとお思いでしょうが、自分で付けた。 師匠花緑の祖父、先代の小さんが、 この二つの名前を気に入っていたのだけれど、みんな断った。 「おさん」と 言っても、赤ん坊を産む方じゃない。 「おさんどん」から来ている。 「お さんどん」と声を掛けてほしい、「おっさん」と言わずに…。(羽織を脱ぐ)
馬は、人や荷物を運ぶ。 今は、クロネコが運ぶ(拍手)。 夜中に思いつい た、言ってよかった。 峠を越えて、くたびれても無理なかんべえ、馬をつな いでるから、ここでメンコしても、そばに寄っちゃあならんぞ。 (馬に)い ま掛け取りに判をもらって、荷を下ろしてやるから、待ちなさい。 オンジー、 馬方だ! いないのかな、待つべえ、陽気がいい。 腰を下ろすと、眠気を催 す。
太十どんでねえか。 三州屋さん。 裏の畑で大根の種を蒔いていた、途中 ではやめられねえ。 蒔き終えた。 三州屋さん、味噌持って来たよ、二樽。 おかしいな、頼んでない。 裏町の三河屋は、□に三、お前とこは○に三、こ の書付は□か。 三河屋へ、行って来るけ。
あれ、馬がいねえ、つないだ馬が…。 ハバカリでも、行ったか。 子供ら、 馬、しんねえか? 竹やんがメンコ飽きて、馬の腹の下くぐろうって、言った んだ。 死ぬ気でくぐった。 竹やんは、慣れっこになって、鬼ごっこで馬の 腹の下に隠れた。 脚の真ん中にもう一本、ブーラブーラ下がってるのに、竹 やんが横っ面を張り飛ばされた。 シッポの毛を抜いて、トンボつりしようっ てんで、5、6本指に巻いて、ソレッとやった。 ヒヒーン、タターーッと駆け 出した。 どこへ行ったか、わかんねえ。 上だべか、下だべか。
早く捕まえて、荷を下ろしてやんねえと。 茶屋の婆さん! トコロテン出 ちゃって、イモの田楽しかないよ。 走る馬、見なかったか? 体は達者で、 有難い。 馬だよ、走る馬。 耳も達者で有難い。 駄目だ、こりゃ。 突っ立っている人、馬、通んなかったか? 今朝、早く来て、田の草取りを してたが、明日の天気の具合はどうかな。 馬は通らなかったか。 知らねえ。
寅十でねえか。 ♪立て場、立て場でーーッ、酒さえ飲めばーーッ。 太十 でねえか。 いいとこで、会った。 馬、知んねえか。 馬は、顔長くて、脚 が4本だ。 オラの馬だ。 ワレの馬も、変りなかんべ。 味噌をつけた馬だ。 オラァ、長いこと生きてるが、馬の田楽は食ったことがない。
台所おさんの田舎弁、それらしくしているつもりかもしれないが、少しわか りづらかった。
コメントをどうぞ
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。
※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。
※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。